2020年3月27日金曜日

コロナ・ウィルスの不安に対処する方法 
Coping with coronavirus anxiety

ハーバード大学医学部のブログからです。
不安やストレス解消にヨガや瞑想がよいと勧めています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

新型コロナ・ウィルスとその症状のニュースに不安を感じていますか?ええ、その通りでしょう。表面化している不安な気持ちにどう対処すればいいのかと思っているなら、この記事が多くの人にとって役立つガイドとなるでしょう。健康に関しての不安や心配、または脅迫的な思考や行動と闘うことの多い人にとっては、より特別な援助が必要かもしれません(次回の記事で説明しましょう)。


新型コロナ・ウィルスの不安の中でも落ち着きを持とう


自身の不安をどのように扱えばいいのかを知るには、少し頭を使わなければなりません。以下の質問に答えてみましょう。
  • 不安がつのる時、一般的に体には何が起こるのか?

  • どれくらい不安に感じているのか?

  • 何が最も怖いのか?

  • 大抵の場合、何が不安を解消するのか?

新型コロナ・ウィルスのような悩ましい脅威に面して不安が沸き起こるとき、不安を解消するために何が役立つ傾向を持つのかに焦点をあてる必要があります。そして、ある行動を少しだけ多く行う一方で、ある行動を少しだけ少なくすることです。

こうした考えを頭に入れておきましょう。そうすれば、準備万端です。自分を冷静に落ち着かせるための手段を講じることができます。何が自分にとって効果があるのか覚えておきましょう。人間はみんなそんなに違いはないものの、自分の好みや最善の方法はそれぞれ持っているものだからです。


これをやってみよう


  • ビデオ・チャットや電話、メッセージやメールで友達や家族と繋がろう。実際に一緒にいないとしても、友達や家族をの繋がりの強さを感じるのに本当に役立ちます。

  • 信頼できる医療情報源に従おう。そうすれば、ウィルスや症状に関する偽情報や間違いを防ぐことができます。


これはやめておこう


嘘や心配の種や偽情報を取り込みすぎないようにしてください。私は、朝に信頼できる情報源から定期的にアップデートをしたら、一日の終わりにさっと再度チェックします。24時間ずっとチェックし続ける必要はありません。実際、どんどん不安になっていきます。



新型コロナ・ウィルスに感染するリスクを下げる実用的な方法を取ろう


私たちができる健康で賢明な方法は次の3つです。
  • 不要な旅行や人混みを避ける

  • 石鹸と水(あるはアルコール・ベースの消毒薬)で20秒間よく手を洗う

  • 顔、特に目や口、鼻に手を近づけない

コロナ・ウィルスに感染した多くの人に、潜伏期間の間は熱や空咳などの症状が現れます。しかし、症状のない人もいます。感染者が咳やくしゃみをするとウィルスを撒き散らす可能性があります。数メートル空気中を飛ぶウィルスの飛沫は、吸い込んでしまう恐れもありますが、それよりもドアノブやエレベーターのボタンなど人が触る表面に付着する可能性があります。


慎重に注意しなければなりません。が、主要な予防策を行えば、深く息をして落ち着くことができます。いつもいつも最大の注意を払う必要はないですし役に立ちません。もしそうすれば、精神的にも身体的にも疲弊してしまうでしょう。ですから、自身の警戒レベルを自分の身近な周囲だけに留めましょう。そして帰宅したら、手をよく洗ってリラックスして安全と思えるようにしましょう。全ての人にとって安全が基本となるのです。



コロナ・ウィルスの心配の中でどうリラックスする?


絶対に確かなリラックスの方法は以下です。

  • ヨガですヨガをやるようなタイプじゃないって?やりたくなければやる必要はありません。自分にとって効果があり楽しめる何か新しいことを試したり新しい活動を見つけるのは、時として好ましく健康的な気晴らしとなります。Yoga Studio や Pocket Yogaのアプリもよい選択のひとつでしょう。

  • 瞑想です。定期的な瞑想はとても落ち着かせてくれるものです。Headspace や Calm など、簡単な瞑想法を教えてくれるアプリがたくさんあります。

  • コントロールした呼吸です。簡単なテクニックのひとつに「スクエア呼吸」があります。呼吸を四角に沿って行うようイメージします。息を吸う、止める、吐く指示にしたがって、各辺ごとにゆっくりと3つ数えます。やってみましょう。初めの辺の上で息を吸いましょう。ゆっくり、1、2、3と数えます。上辺で息を止めます。1、2、3。反対の辺で息を吐きましょう。1、2、3。そして底辺で息を止めます。1、2、3。これを数分やった後は、きっとより平穏で落ち着きを感じるでしょう。


あなたの好きなリラックス法も試しましょう。良い本を読んでもいいしコメディを観てもいいでしょう。いつも楽しんでいるいつもの食べ物を食べましょう。友達や家族と連絡を取り合いましょう。連絡を取るのは、あなた自身にも彼らにも良いことです。


私たちはみんな一緒にいます。ウィルスに関するニュースは、悪化するでしょうがやがてよくなるでしょう。進むべき道を教えてくれる公衆衛生の専門家の声を聞きましょう。みんなのためになる分別のある行動をとりましょう。少し我慢して、清潔を保ち、自分に合ったリラックス法を行い、そして何か新しいことをしてもよいかもしれません。何をして何をしないかについて健全で分別のある選択をすることは、できるだけうまく安全を維持するために大きな違いをもたらすはずです。





(出典)https://www.health.harvard.edu/blog/coping-with-coronavirus-anxiety-2020031219183

2020年3月25日水曜日

免疫のためにできる4つのヨガポーズ 
Do these 4 yoga poses regularly for better immunity

今回はTimes of India の関連紙 E Times の記事からです。
ーーーーーーーーーーーーーーー



自然に免疫を高めるヨガ


Covid-19 の恐怖が全国に広まっている今、人々は健康を懸念しています。みんなが実践すべきことは清潔に保つということですが、その他に自然に免疫を高める方法もあります。

ヨガは、この外出禁止の間、安全な自宅から出ることなく活力を自然に高める方法のひとつです。



なぜヨガ?


ヨガは、ホリスティックに体を健康に保つため何世紀も行われてきました。しかし、ヨガの効果はストレス解消や精神的な健康だけではありません。

正しく行えば、ヨガは体に活力を戻し、毒素と負のエネルギーを取り除き、重要な内臓の働きを維持してくれます。内側も外側も、抵抗力を作る助けとなります。ヨガのポーズには、免疫をサポートし、バランスを整え、高めてくれるものがあります。ヨガを定期的に行うことで、体内の酸化ストレスを少なくすることができ、炎症や悪化を緩和することができます。

ヨガは幸福をもたらし、心と体を全体的にサポートしてくれます。免疫を活性化し危険を回避するためにできるヨガのポーズ4つをお伝えしましょう。



プラナヤマ


基本的なヨガポーズのひとつであるプラナヤマは、免疫を高め、体に活力と良いエネルギーを取り込むための最もシンプルで効果的な方法のひとつです。

スッカーサナ(簡易座)とプラナヤマは、どちらも深い呼吸を促進し、ストレスホルモンを減少させ、心拍や神経を穏やかにします。全て免疫によい効果を与えます。



  • 地面に脚を組むか跪き、快適な形で座って始めましょう。
  • 両肩は股関節の上に、頭は肩から高く持ち上げ、体を少し伸ばしましょう。
  • 次に深く息を吸って背骨を伸ばし、そしてゆっくり息を吐きます。
  • このまま少なくとも10呼吸しましょう。



マツヤサナ(魚のポーズ)のバリエーション


免疫を強化するポーズの魚のポーズまたはマツヤサナは、毒素を排出しエネルギーを高めます。また、鼻腔を開き詰まりを取り除くので、気分がすぐれない時によいでしょう。


  • 蓮華座から始めましょう。まず頭をゆっくりと持ち上げ、そして胸を上げます。
  • 胸はリラックスしましょう。肩の力を抜いて腕は広く開きます。
  • 両掌を上に向け、両脚を床に置いたまままっすぐ伸ばします。
  • より効果を得るために、この位置で2-3分続けましょう。




ヴィパリタ・カラニ(壁に両脚を上げるポーズ)


「金に両脚をあげるポーズ」という名前の通り、この逆転ポーズはストレスを解消します。また神経の繋がりを向上させ、血流を促し体を活性化します。また、不妊にもよいと言われています。



  • ヨガマットかブランケットを床に敷きます。体の横を壁に向けて座りましょう。
  • ゆっくりと腰と骨盤を動かして両脚を壁の方向に上げます。特にビギナーの場合は、一気にやろうとしないでください。
  • 位置が定まったら、腰や腿の裏に負荷がかからないようにしましょう。
  • 腰の筋肉を少し持ち上げてみましょう。頭は快適に休ませておきます。少し持ち上げることで血流が高まり効果が上がります。
  • 5ー10分間このポーズを続けます。最初は慣れるまで少し時間がかかりますが、一度慣れるともう大丈夫です。



ウッターサナ(前屈)


このポーズのような逆転のエクササイズは、鼻詰まりを緩和し、防御の最初となる鼻腔と粘膜を保護するためにとても良い方法です。地面に屈服し体を曲げなければならないポーズは、免疫を若返らせる最も簡単な方法のひとつです。



  • 立位で両足を股関節幅に開きます。
  • 少し膝を曲げて腰を少しリラックスさせながら、前屈します。優しく行いましょう。
  • 両手を床に置きます。ビギナーは両手を足首か腿に置いても良いでしょう。
  • このまま5ー10呼吸します。








(出典)https://timesofindia.indiatimes.com/life-style/health-fitness/fitness/do-these-4-yoga-poses-regularly-for-better-immunity/photostory/74776515.cms

2020年3月20日金曜日

もっと幸福感を:鬱と不安のためのポーズ Vol. 2
Feel Happier: Poses for Depression & Anxiety


鬱のためのヨガ


1. アド・ムカ・シュヴァナサナ(下向きの犬のポーズ)のバリエーション


効果:不安を取り除き体にエネルギーを与える

お腹を下にして横たわり、指をしっかり広げて胸の横に両掌を置きます。四つ這いになりましょう。膝は股関節の真下に、両手は少し肩の前に置きます。折ったブランケットを1、2枚胸骨と並ぶように置きます。ブランケットの高さは、頭を支えられるが首がまっすぐになるようにしましょう。もう一度四つ這いに戻ります。爪先を下に向けて、息を吐きながら臀部を高く上げ、腿を後ろに高く上げます。臀部を持ち上げながら肘は伸ばしたままにし、頭頂をブランケットの上に載せましょう。背骨を伸ばし頭を下ろすように腕と脚を使います。そこで30秒から1分、深く呼吸しながらホールドします。



2. パスチモッターナサナからハラーサナへ(座位の前屈から鋤のポーズへ)


効果:失望や不安を緩和、体全体にエネルギーを与える、より生き生きした気分になる


首の問題、高血圧、心臓病、生理中、妊娠中、下痢や吐き気のある時は行わないでください。


折りたたんだブランケット1、2枚の上に、両脚を前に伸ばして座ります。大きく深い呼吸をしましょう。息を吸いながら胸骨から頭へと持ち上げ、背骨を少しそらします。

息を吐き両脚の上方で胴部を伸ばします。頭は膝の真上に載せ、両手はできれば床におきます。臀部がブランケットから浮かないようにしましょう。

背中を丸めながら膝を引き揚げ、前屈から起き上がったら、後方へ丸く転がって鋤のポーズに入ります。両手を上げて両足に近づけましょう。首に疲れを感じたら両手で背中を支えます。この2つのポーズを10ー15回ほどいったりきたりしましょう。



3. アド・ムカ・シュヴァナサナ(下向きの犬のポーズ)のバリエーション


下向きの犬のポーズを繰り返しましょう。30秒から1分ホールドします。



4. プラサリタ・パドッタアサナ(角度の広い立位の前屈)のバリエーション


効果:不安な神経を落ち着かせ疲労をなくす


体の前に折りたたんだブランケットかボルスターを置きます。両足を広く開き(120cm程度)、足の外側を並行に保ちます。腿は引き揚げておきましょう。息を吐き股関節から前屈し、両手を両足の間の床に置きます。肩甲骨を耳から遠ざけるように引き揚げながら腰を天井に向かって持ち上げます。ハンドスタンドの時のように、頭は同じ場所に置いておいてください。見上げて胴体を前に伸ばし、尾骨から頭骨の付け根まで背中がやや反るように曲げましょう。このまま5-10秒保ちます。そして息を吐き、肘を曲げ、頭頂をサポートに下ろしましょう。ここで1分間深い呼吸をします。背中を反らした位置まで戻し、両手を腰に、胴体を起こしながらポーズから出ましょう。



中上級の方は、サーランバ・シルシャサナ(支えのあるヘッドスタンド)をしてもよいでしょう。エネルギーを与え、感情のバランスを整え、脳を若返らせます。




5. ドウィ・パダ・ヴィパリタ・ダンダサナ(2本脚の逆転の杖のポーズ)のバリエーション


効果:胸を開き気分を高め、身体を元気にする


硬く畳んだブランケットを椅子の上に置き、背の方を壁にして壁から60cmほど離しておきましょう。両足を椅子の背から通してお尻を座面の端に置き、壁に向かって後ろ向けに椅子に座ります。両脚を伸ばした時に足で壁を押せる程度の距離を保っておきます。椅子の背を握り、肩甲骨が座面の前端にくるように体を反らしていきます。膝は軽く曲げた状態で足を壁に付けて、両腕を椅子の脚の間から通して後脚かレールを持ちます。膝を伸ばして壁を蹴り、腿はくっつけて内に回します。首に問題がある場合は、頭をボルスターに載せましょう。最大で1分間そのまま静かに呼吸し、そのあとポーズから出ます。



6. ウルドヴァ・ダヌラサナ(上むきの弓のポーズ)のバリエーション


効果:血流を改善し、神経を刺激する、幸福感を作る


ブロック2個を、肩幅に離して壁に立てかけます。頭がブロックの間にくるように仰向けに横たわり、両足を股関節幅にして膝を曲げ、かかとを臀部に近づけましょう。肘を曲げ、指が足のほうに向くようにして頭の両脇に両手を付きます。

息を吐きながら、腰と胸を持ち上げ、腕を伸ばし、そして両脚も伸ばします。尾骨を引き揚げて、腿の裏を臀部の方に上げます。可能ならそこで5-10秒保ちます。無理ならそのまま戻り、2-3回繰り返しましょう。膝と肘を曲げ、体をゆっくり床におろしてポーズから出ます。



7. バラサナ(子供のポーズ)


効果:後屈後の脊柱筋を解放し神経を落ち着かせる


床に膝をつき、足の親指同士を付けて膝の距離は股関節よりやや広めにします。前屈して両腕と胴部を前に伸ばしましょう。頭は床かブランケットの上で休ませます。


8. サーランバ・サルヴァンガサナ(肩立ち)


効果:苛立ちを解く。神経を落ち着かせ栄養を与えて感情のバランスを取る。また内分泌系のバランスを取る


肩の問題、高血圧、生理中はこのポーズ(ハラサナも)をしないでください。


首と肩の下に二枚の畳んだブランケットを置いて横たわり、両腕は体の横に伸ばしておきます。息を吐いて膝を曲げ、両脚を胸に引き込みます。両手で床を押し、曲げた脚を頭上に揺らし上げます。そして、指を背骨側に向けながら両手で背中を支持しましょう。腰と腿をより高く上げ、脚が上がったらまっすぐ伸ばします。胸骨の上部は顎に向かって引き揚げます。肘は内側に寄せながら、できるだけ掌と指で押し、全身が長くまっすぐなのを感じましょう。肘が内に入りにくいときは、ストラップを肘のすぐ上の腕にかけておきます。ここで数分キープしましょう。


9. ハラサナ(鋤のポーズ)


効果:最も神経を鎮めるポーズのひとつ。苛立ちを解放する


背中を両手で支え続けながら、両脚を頭の上まで下げ、爪先を床に下ろしましょう。腿に力を入れて顔と両脚の間にスペースを作っておきましょう。ここで深くゆっくりと呼吸しながら、数分、あるいは快適な長さまでキープします。椎骨ひとつずつ下ろしながらゆっくりと丸くなっておりましょう。背中をまっすぐにして床に下ろし数呼吸します。



ハッピーエンド


ここで、どれかを選択しましょう。落ち着きを感じ休んでもいいと感じたら、シャヴァサナで10分以上横たわりましょう。まだ不安や鬱を感じていたら、ヴィパリタ・カラニなどの休むポーズを選ぶか、元気で前向きなまま終われるように活性化するポーズを選びまししょう。その場合は、2番の「パスチモッターサナからハラサナへ」を10-15回繰り返します。




ーーーーーーーーーーーー

(出典)https://www.yogajournal.com/lifestyle/feel-happier

2020年3月19日木曜日

もっと幸福感を:鬱と不安のためのポーズ Vol. 1
Feel Happier: Poses for Depression & Anxiety

ヨガセラピーでは、鬱や不安はマインド(精神)が忙しく働きすぎている状態(または極限までいって働きが止まった状態)だと言われます。その動きを緩やかに穏やかに戻すためには、ゆっくりしたヨガなどが向いているのではないでしょうか。
この記事は、パニックを起こした著者の体験を交えてヨガの叡智を紹介しています。
そこまで深刻な問題になっていなくても、誰にでも不安な時はあります。そんな時に応用できるのではと思います。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


鬱との戦いは時として、人生をかけた戦いのように感じられます。そのもがきを止めるのにヨガは役立ちます。


11年前のことですが、私に初めて本格的なパニック発作が起こった夜のことはまるで昨日のことのように覚えています。サンフランシスコのマリーンズ・メモリアル・シアターの狭いバルコニーで当時の彼と一緒に座り、破壊的に悲しく、信じられないほど長い劇を観ていました。3時頃には私の気分は最悪になりました。早く劇が終わらないかと必死で願いながら、シートの上で体を小刻みに動かしていました。すると突然。呼吸が胸でつかえたように感じたのです。喘息の発作が起こりかけているのだと思いました。手を心臓に当て肺に空気を入れようとするのですが、入ってきません。シートのアームに体をもたれかけて、空気をなんとか吸い込もうとしました。何も起こらない。胸は完全に広がっているのに空っぽに感じられるのです。そして本当にパニックになり始めました。すぐに大きな呼吸を吸わなければ死んでしまうと確信したのです。


喉元で心臓がどきどきしていた私は、苛立った人の波を通り抜け暗い劇場から逃げ出しました。階段を駆け下りて道路に出た私は、気が遠くなり体の感覚が完全になくなっていきました。


その後のことはぼんやりした写真のようでしかありません。彼が劇場から出てきて私を観た時のびっくりした表情を覚えています。タクシーから女性を引きずり出し、ドライバーに病院に連れて行くよう言ったことも。そして病院で、看護師が私を座らせて手を私の両肩に置き「息をするのよ、あなた。息できるから」と優しく言ってくれほっとした瞬間を思い出します。そのとき恐怖が消え、死なないのだと気づいてほんの一瞬安心しました。けれど、その安心はすぐにとんでもない悲しみにとって変わりました。奥底から嗚咽が出てきました。その夜の間、ずっと続きました。そして何週間も続いたのです。


その夜遅くに病院から戻った時、私の精神状態は悪化していました。パニック発作の後にまだ感じていた不安だけでなく、もうひとつ加わったのです、鬱という訪問者が。その後数週間、完全に自分を落ち着かせることができませんでした。ずっと泣き続け、世界から孤立した気分でした。毎朝起きて目を開けるのを恐れ、映画館や飛行機、バスなど人混みが怖くなりました。そしてある日、自分の家を出るのが怖くなったのです。頭上に広大に広がる空を、知らない人たちに囲まれて見上げるなんて無理だったのです。この状態を広場恐怖症ということは知っていましたが、それが自分に怒るなんて信じられませんでした。この時点で、助けが必要だと気づいたのです。




この話は、ヨガが私を救った話の一部だと思うでしょう。インドを旅してアシュラムで40日間瞑想して、人生の本当の意味を見つけられ、それ以来幸福に暮らしましたというような。そう言えればいいのですが、不安と鬱から私をまず救ってくれたのは抗うつ剤と心理療法でした。3年後ヨガを始めた頃には、ヨガはより幸せにより健康で繋がっているように感じさせてくれました。ヨガは私を「癒して」くれはしませんでしたが、時間をかけて私の人生を変えてくれました。この8年間、ヨガは新しい思考パターンを作り、自己愛を感じ、恐ろしい未来に心が彷徨う時にも今の瞬間に戻ってくる助けをしてくれました。そして、うまく行ってても行っていなくても、人生はいいものだと信じることができました。これは全てアサナの練習のおかげでしょうか?ええと、そうではありません。ヨガを実践することは私の内側にある景色を多くの意味で変えました。決定的なガイドとしてここに提案するつもりは私にはありません。鬱や不安は複雑で人によって異なりますし、個々の診断と治療プランを得ることが重要ですが、誰かの支援や慰めを得たいという人もいると期待しています。


私にとって、不安や鬱は常に側にあります。この何年かで、パニック発作や長く続く不安が鬱のトリガーとなることに気付きました。その理由は知られていませんが、アメリカ国立精神衛生研究所によれば、ほとんどの不安症(パニック障害、社会不安障害、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、恐怖症などを含む)は鬱を併発します。




アサナの練習は、リラックス反応を誘発し、コルチゾールやアドレナリンなどのストレス・ホルモンを減らすため、不安からくる鬱を和らげるのに役立ちます。リラックス反応がいったん始まれば、多くの人は感情から逃げようとせず寄り添えるようになるのですが、それは不安や鬱のトリガーとなる精神的要素を特定するのに必要なことなのです。しかし、このリラックスした状態に到る道というのは人によって様々なのです。


共にヨガと鬱に関するワークショップを教えているアイアンガーヨガのシニア・ティーチャーであるパトリシア・ウォルデンと、Yoga as Medicine の著者である医師のティモシー・マッコールは、鬱を「グナ」に基づき分類しています。古代のヨガの書によれば、グナとは、ラジャス、タマス、サットヴァという行動パターンとして現れる3つのタイプのエネルギーを指します。ラジャスの特徴は一般的に、動的で興奮しやすいとみなされます。タマスは不活発で、怠惰、恐怖や混乱、そしてサットヴァは純粋な「存在」で明晰、平衡状態のことです。ウォルデンとマッコールは、取り乱した不安誘導性の鬱を「ラジャシック(ラジャスの)」と、より無気力で失望した鬱は「タマシック(タマスの)」と読んでいます。


もしあなたがラジャシックだと感じているなら、つまり落ち着かず不安で恐怖を感じているなら、前屈や回復させるポーズなどの鎮静ポーズで構成されたヨガを練習するのが最良だと考えられます。しかし、心やエネルギーの制御が効かなくなっているなら、完全に静止してリラックスしようと悪化する恐れもあります。そうした状態ならば、練習の始めにアドムカ・ヴルクシャサナ(ハンドスタンド)やヴィラヴァドラサナII(戦士のポーズII)、太陽礼拝などの動的で活気のあるポーズで神経エネルギーを燃やしたりざわめく精神に集中する何かを与えるようにするとよいとウォルデンは助言しています。これらが難しいと感じるなら、アドムカ・シュヴァナサナ(下向きの犬のポーズ、ダウンドッグ)を試すことを提案しています。ダウンドッグの刺激が強すぎるなら、頭の下にボルスターやブロックを置きましょう。そこから、呼吸に集中して攻撃的にポーズを行わないなら、ヴィパリタ・ダンダーサナなどの支えのある後屈で神経を過剰に刺激することなく気分を上げることができます。ウォルデンが後屈は勧めるのは胸を開くためですが、それは不安や鬱の両方を緩和するのに不可欠なことだからです。鬱には体にエネルギーを引き込む吸気に集中する、不安には鎮静と安心感を促進する呼気に集中するのが最良です。


バランスが取れて落ち着いてきたと感じたら、スプタ・バッダコナサナ(横たわった合蹠のポーズ)やヴィパリタ・カラニ(壁に両脚を上げるポーズ)がさらに必要な休息を与えてくれます。また、ウォルデンは目を開けたままシャヴァサナ(屍のポーズ)をすることを勧めています。目を閉じると落ち着かず不安の感情が強くなるからです。




気付きとともに自身を強くする


精神的効能の他に、ヨガは不安や鬱と闘う人にとって計り知れない価値のあるスキルである「気付き」を与えてくれます。もしあの劇場の夜に私がもっと気付きを持っていれば、体の声にもっと違って反応出来たでしょうし、おそらくパニック発作にはならなかったでしょう。息が浅くなっていることに気付き(大抵は不安のサインです)、集中して落ち着きを取り戻すためにヨガの呼吸法を試してみたでしょう。あるいは、その日のもっと早い時間に、疲れているからそんな刺激的な環境にいるべきではないと気づいていたでしょう。いくつかあるより深い問題の影響を観察できたでしょう。その頃の仕事は惨めで、恋愛関係は不安定、故郷の家族と離れて悲しかったのです。もしこれらのことに気づいていたなら、もっと違った選択ができたでしょうし苦しむことも少なかったかもしれません。


一般的に、西洋人がヨガで気付きを高め流方法はポーズの練習を通してでしょう。けれど、クラスの中で使われるたくさんの指示は単にポーズを向上させるためだけではないのです。それらによってあなたの忙しい心が何かに集中し、今の瞬間にいさせてくれるのです。不安症の人にとって、これは特にありがたいことです。「不安になった時は、圧倒されていると感じるので何にも集中できません」と 30 Essential Yoga Poses の著者であるジュディス・ハンソン・ラサター博士は言います。「ポーズや呼吸、マントラなど実体のあるものに集中することは、とても落ち着きます」


また複雑な指示で、体の中で起こっているかすかな変化に自身を同調させることができます。こうした変化にもっと気付くようになれば、心や気分のかすかな変化にも気付くことができるようになるでしょう。体と心がどのように繋がっているかを強く感じることでしょう。「体の気付きを高めることにより、心の中に気付き始めます」マッコールは言います。「各ポーズをしながら心の中で何が起きているかを見るのです。自分を痛めつけているかもしれない。孔雀のように得意になっているかもしれない。ただただ逃げたいかもしれない」


ヨガの練習の中で体や呼吸、感情や思考など瞬間瞬間の気付きに磨きをかけ続けていけば、日々の生活にも気付きをもてるようにになります。「注意していれば、その瞬間に湧き上がるあなたの思考や感情にもっと繋がるようになり、そうすれば解決の半分は終わっています」ラサターは言います。言い換えれば、何かおかしいと気付くことができれば、それを無視して後になって辛い方法で解き放つ(ラサターのいう「あなたのエネルギーのなすがまま」)のではなく、その時にその問題に対処することができます。



受け入れる


ではエネルギーのなすがままにならないにはどうすればいいのでしょう?その裏に何があるのかを知り(気付きの練習が役に立ちます)、逃げたいと思っている時であっても、今何が起こっているのかを感じればいいのです。劇場でのあの夜、私は何よりも逃げたいと思っていました。建物の外に出てしまえば気分がよくなるはずだと確信してしまっていました。でも気分はよくなりませんでした。実際は、その後数週間、どこに行っても自分から逃げ出したいと思っていました。その経験からわかったのは、困難な感情から逃げることはうまくいかないことが多く、結局、あらゆる形で自分に戻ってくるのだと。けれどあの時は、そこで呼吸をして、辛い感情を感じることなどできなかったのです。


それでも時々パニックや不安は、深く根付いた感情の葛藤とは関係なくあっさりとやってきます。着陸までまだ5時間もあるのに飛行機の中で突然暑くなり狭苦しくなったりします。これも同様に、中立の視点から自分の反応を観察し、そこでそれが通り過ぎるのを見届けることが重要なのです。


ヨガの練習はまた、そうした状況に対応する際に必要な受容を教えてくれます。きっと、そのポーズが快適ではなく早くやめたいと思う時があるはずです。難しそうに見えるし難しい感情が起こってしまう。でも、ヨガはあなたがどう感じているかに気付くことを教えてくれ、そして不快で腹が立って悲しく不安に思ったときにでさえ、その状況をうけいれるために呼吸を使うことを教えてくれるのです。マットの上でのこうした状況を切り抜ける方法を手に入れられれば、難しい感情が起こった時もすぐにそれが変化してどこかに消えてしまうのがわかるようになるでしょう。


そして、日々の中で同様の感情が現れた時も(身体的、感情的に関わらず)、恐れが少なくなります。実際、自信が出て、自分の中に流れる感情に対処できる不屈の精神が自分にあると気付きます。痛みと共にいる能力を身につければ、結果的にパニックや鬱を和らげ、その困難の根本を知ることを可能になります。痛みと共にいる能力がやがてそれを徐々に消し去るでしょう。


ラサターの考えでは、鬱は怒りや悲しみなどの感情を否定しようとする時に現れ、その困難な感情を本当に感じる方法を学べば、通り過ぎるまでそうした感情を弱めることができます。「私たちは、不安や悲しみなどから逃げるたくさんの方策を作ってきました。過食や飲酒、そしてエクササイズでさえ。なぜなら私たちは悲しみを否定する社会だからです。でもヨガや瞑想でじっと座ることを覚えれば、感情を受け入れることができるようになります。この訓練は感情と交わることではなく、やがて消えていきます。実際に感情とともに座ることが癒しなのです」


サンフランシスコのベイエリア認知療法センターの認知行動セラピストのマイケル・トプキンスの意見も同様です。「突き放そうとするのではなくパニックを受け入れると、治まります」トンプキンによれば、パニックや鬱を経験した人のほとんどは、恐れすぎてしまいそんな経験を二度としないようにとエネルギーを集中させるのですが、それは単に悪化させるだけです。彼は潮衝に例えてこう言います。もし潮に逆らって泳げば底に引っ張られてしまう。でも潮が落ち着くまで浮かんでいればそのうち潮が岸へと運んでくれるでしょう。




内を見て、愛を知る


最も混乱する鬱の症状のひとつは、自分や周りの世界と切り離されたような感じがすることです。ヨガ哲学の非二元論では、自身とそれ以外の世界との間に解離はないとされています。自分を切り離された物だと見なす傾向は、心とエゴが作り出す錯覚なのです。非二元論は、私たちは毎日多くの二元性を経験しているため掴み所のない概念ですが、その概念の少しだけでも、自身や他者との関係性への考え方を永遠に変えることもあります。


この種は、数年前のサラ・パワーズのティーチャー・トレーニングで私の中に植えられたものです。彼女は瞑想の重要性を説明して、毎日ぜひ座ってくださいと言いました。「瞑想すれば、あなたの本質がわかるでしょう。そのままであなたは完全であることを知ります。なぜならあなたは愛によって作られているからです」



その時は妙にうそっぽく聞こえました。私自身を受け入れられるという可能性は、私にとっては理解不可能だと思えました。それに、。内なる悪魔を一人で沈黙の中で探究することが恐ろしかったのです。手を上げてこう質問しました。「内側を見て善がなければどうですか?ただそこになかったら?」彼女は答えました。「試してみないとわからないでしょう」そして「怖がらないで」そう付け加えました。



私は怖くて試しませんでした。その日も、その月も、そしてその年ずっと。心から瞑想に身を委ねるまで3年間かかりました。そしてある日、瞑想リトリートの途中で、感じたのです。とても静かで、とても優しい幸福感を。突然、自分が自然の一部かのように感じたのです。まるで小さなお花が私の心臓で咲いているような。まるで柔らかい影を落とす樹々に囲まれているような。いつもからまって固まっているように感じていたお腹の奥底から、暖かい光が輝いているような。それは爆発的とか熱狂的な幸福感ではありませんでした。もっと小さくてもっと心地よいものです。その瞬間それがやってきて、完全に怖さがなくなりました。不安がなくなったのです。ついに、初めから私の練習を駆り立ててきたヨガ・ティーチャーであるエリック・シフマンの言葉を理解したのです。「恐怖からの解放は、最後には愛の花を満開にするものだ。その状態にあると、あなたは他者の中にあるものを愛することができるし、他者もそれを見たことであなたを愛すだろう。これがヨガが勧める優しい世界の認識だ」


この経験のおかげで、人生の流れの中で自分を信頼することができました。奇癖のある神経症な私や、厄介な癖のある上階の隣人や、ひどい行動をする世界中の人々でさえ、みんな愛から作られていると突然わかったのです。自分のもっとも深いところに繋がれば、他の誰とでも繋がっていることに気づけると知ったのです。



今もなお私には不安と闘うことが、何日か、何週間か、何ヶ月かあります。また鬱が私の扉を叩きにやってくるのではと怖くなる日もあります。でも自分をよりよく知ることができた今、こうした感情に感謝できるようになりました。逆説的に、不安や鬱を経験したことで人生の不安が減りました。試されて切り抜いたのだと。また他の人の葛藤にもより理解できるようになりました。よりよい聞き手になり、より哀れみ深く、自分を笑い飛ばせるようになり、それが大きな救いとなっています。こうした経験がヨガを見つける気付きへと導いてくれたのだと確信していますし、思っていたよりも幸せにしてくれています。だから、もしあなたがとても辛い葛藤の最中にいるとしても、それは変わるのだとわかってください。とれがあなた自身の深い部分へと誘ってくれると信じてください。いつかそれに感謝する時がくるかもしれません。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次回は具体的なポーズについてです。




(出典)https://www.yogajournal.com/lifestyle/feel-happier




2020年3月16日月曜日

アーユルヴェーダ: 食事の方法 Vol.2 
GOOD FOOD- AYURVEDA CONCEPTS, DIRECTIONS, PREPARATIONS

つまりは、清潔な場所で、食い合わせを避けながら、体質に合ったものを規則正しく、出来立てを良く味わって、腹八分で食べましょう、ということでしょうか。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


食習慣の8つの要素


その人に合った食事を決める時に考慮すべきことが8項目あります。プラクリティ(性質)、カラナ(加工)、サムヨガ(組み合わせ)、ラシ(量)、デシャ(場所)、カラ(時間)、ウパヨガサンシュタ(用法)、そしてウパヨクタ(使う人)です。これらは、アシュタ・アハラ・ヴィディ・ヴィシェシャ・アヤタナと呼ばれます。


プラクリティ(性質):そのものの性質は遺伝によってもたらされます。例えば、本来、黒緑豆は重く緑豆は軽い性質があります。同様に豚肉は重く、鹿肉は軽いです。


カラナ(加工):加工とはそのものの性質を大幅に変化させるものです。撹拌や加熱、湿度や季節、場所、容器などの環境要因、そして保存期間などが性質に影響を与えます。例えば、水を加えたり火で加熱すると、固形物が柔らかくなったり液化したりします。凝乳やヨーグルトは本来浮腫を誘発しますが、撹拌するとバターミルク(Takra)になり浮腫を取り除きます。毒も、正しく浄化し加工したあとに薬として使われることもあります。


サムヨガ(組み合わせ):2つ以上の物質を組み合わせるとまた、それぞれの本来の性質を変えることがあります。例えば、蜂蜜やギーは健康にいいのですが、それぞれを同じ量で摂取すると害になります。同様に蜂蜜、牛乳、魚はどれも悪いものではないのですが、組み合わせて摂ると毒になります。このように、組み合わせると変わった性質を示す物質があるのですが、それぞれ別の間はそうした性質は見られません。


ラシ(量):摂取する食物の量はラシと呼ばれます。その人に合った食事量を決める際、材料それぞれの量(パリグラハ)と食事の総量(サルヴァグラハ)を考慮しなければなりません。これは、その人の消化力によります。食事量はまた、消化にも影響します。軽い食事でも多すぎれば消化するのには重くなってしまいます。


デシャ(場所): デシャとは国を示し、違う無所で生産された食物や薬の材料はその性質も異なります。自然植生で作られた物はよそで作られたものよりもよい質を持ち、またその地域の人にも合っています。


カラ(時間): 食事の中身は季節によって変えなければなりません。例えば、冬には消化力が高まるので重い食物が良いのですが、夏や雨季は消化力が下がるため一般的に軽いものがお勧めです。また、病気の時には、関係するドーシャと病気の段階によって食事の中身を選ぶ必要があります。例えば、発熱してから7日間ギーは禁忌となりますが、そのあとは患者の体力を高め熱による乾燥を緩和するためにギーが処方されます。


ウパヨガサンシュタ(用法): 食事の指針です。最も重要なルールは、前の食事が消化されてからというものです。摂った食事が正しく消化されていると、軽く、空腹感と喉の渇き、自然な食欲が時間通りに現れます。

相反しない物を避けて、温かい油分のある食事が勧められます。食物は前の食事が消化されてから良い場所で正しい量を摂るべきです。速すぎず遅すぎず、話したり笑ったりせず、集中して食べましょう。

良くない食習慣は多くの病気の原因となるため避けるべきです。健康に良いものと悪いものを同時に摂るのはサマシャナと言われ、不健康です。


前の食事が消化される前に食べることはアディヤシャナと言われます。アーマ(毒)が作られ多くの病気の原因となります。


不規則な時間に食べる、多く食べたり少なく食べたりすることはヴィシャマ・アシャナといいます。これはヴァータの悪化に繋がります。なので、同じ時間に適切な量を食べることが勧められます。


ウパヨクタ(使う人):食物を摂る人のことです。その人にとって何が特に健康的なのかそうでないのかを考慮すべきです。それによって食品を選んだり避けたりするとよいでしょう。




食習慣の指針 (アハラ・ヴィディ・ヴィダーナ)


アーユルヴェーダには、アハラ・ヴィディ・ヴィダーナと呼ばれる健康的な食習慣のための10のルールがあります。これは健康な人にも病気の人にもよいものです。いつの時も良い習慣というのは、性質が相反しない油分のあるものを、前に食べた物が消化されてから、全て良い物に囲まれた良い場所で、速くもなく遅くもなく、話したり笑ったりしないで集中し、自らを十分考慮して、温かい食事を食べることです。


ウシュナ(温かい食物): 温かく美味しい作り立ての食物は消化を促進し、消化器内のガスを取り除き、分泌粘液を減らします。


スニドガ(油分を含む):油分を含む食物は美味しく、また消化液を刺激し、消化を促進、ガスを減らし、体に栄養をもたらし、感覚を研ぎ澄まし、体力をつけ顔色を良くします。


マトラヴァータ(適切な量):正しい食事量はドーシャや消化の均衡を乱さず、消化を促して通りが良くなり、寿命を伸ばします。

チャラカ(アーユルヴェーダの始祖)は、頭の中で胃を3つの部分に分けよと言っていました。ある部分は固形物で満たし、次は液体で満たし、そして3つめは空にしておけと。この言葉を理解することにより正しい量かどうかを知ることができます。

食べ過ぎのサイン:食後、過剰な重さや腹部のつまり、脇腹の痛み、感覚の飽和感を感じたり、空腹感や喉の渇きがなくなってしまえば、それは食物を多く取りすぎたことを示しており、3つのドーシャを悪化させる原因となります。

適切な量を食べたサイン:上記の食べ過ぎの兆候は見られず、座っても立っても、横たわっての動き、呼吸、笑う、世間話をするのが楽だという感覚があり、夜や朝までにすぐ消化され、体力がつき顔色や生育もいい、それらが適切な量を摂ったことを示しています。

量が少なすぎるサイン:食事が少なすぎると満足感が得られず、体力、免疫が下がる、顔色や生育が悪くなる、ガスが上がってくる、寿命が短くなる、性的なエネルギーが下がる、体や精神、知力、感覚が弱まり。ヴァータの悪化となり80におよぶヴァータの異常に繋がります。


ジルニ(前の食事の消化):いつの時も前の食事が消化されてから食べるべきです。適切な量を食べていれば、食欲や喉の渇き、軽さ、ガスや腸、尿の動きを感じ、心や経絡が明晰になります。


この良い食習慣は食物をちょうど良い時間で素早く消化するのに役立ち、寿命を伸ばしダートゥ(体の構成要素)を悪化させません。



間違った食習慣


アディヤシャナ:前の食事がまだ消化されないうちに食べることを言います。これは間違った食べ方であり、ドーシャを即座に悪化させます。前の食事の消化の途中で食べると、どちらも未消化となり、消化されていないものと消化されたものが混在し、アーマ(毒素)の生成に繋がります。


ヴィシャマシャナ:不規則(ヴィシャマ)な食べ方は良くありません。決まった時間に食べないこと、食べすぎたり少なすぎたりすることはヴィシャマシャナといいます。これはヴァータの悪化を増加させます。


サマシャナ:健康に良いものと不健康な物どちらをも含む食べ物を食べることを言います。


ヴィリャ・アヴィルッダ(相反しない):一緒に摂る食物は相反しないものであるべきで、相反するものを一緒に摂るとヴィルッダ・アハラの原因となり病気になるため避けなければなりません。


イシュタ・デシャ・サルヴァ・ウパカルナ(適切な場所と環境):食物は適切な場所と良い環境で食べなければなりません(サルヴァ・ウパカルナ)。それによって精神的そして肉体的な障害を防ぎます。例えば、臭い匂いがしたり恐ろしい光景が見える場所、また良くない環境で食べると精神的に落ち着かず、食欲や消化に悪影響を及ぼします。


ナアティ・ドゥルタム(速く食べない):あまり速く食べてはいけません。食物が違う通り道に入ることもありますし、味わうことができず、健康も損ないかねません。


ナアティ・ヴィリムバタム(時間をかけすぎない):あまりにもゆっくり食事をすると満腹感が感じにくく、食物が冷めてたくさん食べてしまう可能性があります。ですから、食事はあまりに速くあまりにゆっくりとは食べてはいけないのです。


アジャルパナ・アハサナム(話したり笑ったりしない):食事の際は食べることに集中し、話したり笑ったりしてはいけません。速く食べるのと同様の問題がおこりかねません。


タンマナ・ブンジタ(完全に集中して食べる):食事は完全に集中して食べなければなりません。


アートマナマ・アビサミクシャヤ(自己の本質を考える):食品は、食べる人に合ったものを選ぶよう十分に考慮しなければなりません。





アーユルヴェーダは生命の科学で、その選択から最終段階まで食に関しての重要な要素を包括的んアプローチで提供しています。この注意深さによって人々の健康と幸福を維持することができ、理想とする幸福という目標に到達できるのです。






(出典)https://ayurvedapc.blog/2019/06/08/good-food-ayurveda-concepts-directions-preparations/

2020年3月12日木曜日

アーユルヴェーダ: 食事の方法 Vol.1 
GOOD FOOD- AYURVEDA CONCEPTS, DIRECTIONS, PREPARATIONS

アーユルヴェーダにおける食事の仕方について書かれた記事です。
全てを現代の日本で行うのは難しいかもしれませんが、参考になる点は多いと思われます。
ーーーーーーーーーーーーーー


消化の火であるアグニ(Agni)は、体を保護する鍵となります。食物は内なる火(アグニ)の燃料となります。食物と飲料をきちんと摂れば、成長、生命、知性、健康が促進されるのです。


食物を選んで食べるために考慮すべき要素が7つあります。

食物に関する要素


1. スヴァバーヴァ(性質)
2. サムヨガ(組み合わせ)
3. サムスカラ(加工)
4. マトラ(量)
5. デシャ(生育地)
6. カラ(季節)
7. ウパヨガ・ヴィヤヴァシュタ(用法)


スヴァバーヴァ – 性質
重い軽い、乾燥している油分が多い、遅い速い、冷たい熱いなど食物の本質を見極める
例:肉や小麦は消化するには重いが、 粥(カンジ)は軽い。

サムヨガ – 組み合わせ
健康を促進する組み合わせ 例:小麦と牛乳
良くない食べ合わせ 例:牛乳と魚、同じ量の蜂蜜とギー

サムスカラ - 加工
固有の性質に変化をもたらす加工のこと
例:米は火を入れると消化するのにより軽くなる

マトラ - 量
食物の性質や種類などによる量のこと
例:重い食物は少なく、軽い食物は多く摂るべき

デシャ - 地域や場所
食物の生育地や摂取者の居住地

カラ - 季節
食物を摂取、消化する時期のこと
また、食物を摂る季節や一日のうちの時間帯を示す
例:凝乳は夜に摂らないほうがよい

ウパヨガ・ヴィヤヴァシュタ
食物を摂る方法のこと


食物を食べる手順


  • 食べる前に便通を留意する 
  • 食べる前に入浴するか、両手、顔、足を洗う
  • 他の場所から離れた清潔な場所に座る
  • 太陽の方角に向く
  • 食物を提供してくれる自然に祈り感謝する
  • 他者に食事を与える
  • 食べることをヤグナ(ヴェーダの火の儀式)とみなし、バガヴァン(神)である内なる火(アグニ)に供物を捧げていると考える
  • 集中して確信を持って食べる。食事の間はテレビを見たり会話はしない
  • 敬意と愛を持って食物に向き合い良く噛む
  • 食事に6味全てが存在することを感じる
  • 最初に甘く油の多いものを食べ、次に酸っぱい辛いもの、最後に苦いもの渋いものを食べる
  • 食物は温かくなければならない
  • いつも同じ食物を食べる(体や年齢、季節、ドーシャ、病気に合ったもの)
  • 胃の半分は固形物で、4分の1は液体で満たし、そして残りは空気に残しておく。
  • 毎日、米、小麦、大麦、蕪、葡萄、緑豆、黒糖、ギー、牛乳、蜂蜜、ザクロ、トリファラを摂る。他の地域においては類似した組み合わせをしてもよい
  • 凝乳、ギー、蜂蜜、バターミルク以外は、前日以前に作った食物を摂ってはいけない
  • 夜には凝乳を避ける
  • 食べ過ぎや不規則な食事を避ける
  • アヌパナ – 食後の飲むと満足感が得られ、消化を助け幸福感を与えてくれる。飲料水にハーブや葉、薬などを加えても良い。糖尿病患者は、血糖を下げるもの、血糖値を通常に保ってくれるハーブをとってもよい


食後の活動


タムブラム(訳注:キンマの葉)を摂取し、100歩ほど歩いて、左側を下にして横たわりましょう。食事直後の入浴、運転、水泳、激しい運動は避けます。



植物中心の食事の健康促進要素


植物中心の食事を摂る主な面のひとつは、食物繊維が豊富なことです。一般的に「食物繊維」とは植物細胞の壁で栄養のないものを指します。さらに、植物中心の食事には、飽和脂肪酸が少なく、必須脂肪酸と抗酸化栄養素、植物性化学物質が豊富に含まれます。こうした大切な植物の化合物は、心臓病や癌、関節炎などの病気を防ぐ重要な役割を担います。



食物繊維の効果


1. 腸内の通過時間を短くする
2. 胃に長く留まり、食後の高血糖を防ぐ
3. 安全性を高める
4. 膵液の分泌が増加
5. 便の重さが増える
6. 腸内フローラによりよい環境を作る
7. 短鎖脂肪酸の生成を増やす
8. 血清脂質レベルを下げる
9. 水溶性胆汁を増やす


毎日の食物繊維の目標摂取量は25から35グラムです。これは、未加工の植物を丸ごと摂るようにすれば簡単に達成可能です。野菜は繊維の宝庫です。事実、調理した人参1カップの繊維量は、全粒粉パン3枚分、オーツ麦2カップ分に当たります。


繊維の多い食事は、多くの病気の予防や治療に重要です。


食物繊維不足に深く関連のある病気は以下の通りです。
代謝肥満、痛風、糖尿病、腎臓結石、胆石、虫歯、自己免疫疾患、悪性貧血、多発性硬化症、甲状腺中毒症、皮膚病、高血圧、脳血管疾患、虚血性心疾患、静脈瘤、エコノミー症候群、肺塞栓症、便秘、憩室炎、痔、 結腸癌、過敏性腸症候群、腫瘍性大腸炎、クローン病



バランスの良い食事


健康を維持し病気を予防するために健康的な食物で構成されたバランスのとれた食事をしなければなりません。できれば赤米、大麦や小麦、緑豆(Mugda)、岩塩、アマラキの実(アムラ)、牛乳、ギー、蜂蜜、殺菌した水を含んだものがバランスの取れた食事であり健康によいと考えられています。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

次回に続きます。




(出典)https://ayurvedapc.blog/2019/06/08/good-food-ayurveda-concepts-directions-preparations/

2020年3月9日月曜日

ジャラ・ネティ(鼻腔の浄化法) 
JALA NETI: Cleansing Technique

Covid19 のせいで会場が使えなくなり、私のヨガクラスもしばらくお休み中です。

季節はどんどん春になり、外は花粉や埃が飛びまくっています。
鼻がムズムズ、目も痒い!薬を飲むほどでもないけれどなんとかこの不快を解消したい。
そういう時は、(そういう時でなくても年中した方がいいのですが)ヨガ・アーユルヴェーダの叡智クリヤ(浄化法)ですっきりしましょう!
VYASA出版物 Yoga for Promotion of Positive Health のクリヤの章からの抜粋になります。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー




はじめに


クリヤ(Kriya)とは浄化法のことです。ある意味では、私たちはみんな毎日クリヤをしています。入浴、洗顔、歯磨きなど全てクリヤなのです。しかし、ヨガでのクリヤとは、ヨギによって開発された特別のテクニックを指し、内臓の浄化を意味します。ヨガの伝統で伝えられてきたクリヤは主に6つあり、「サット・クリヤ」と呼ばれるとても包括的なものです。


サット・クリヤとは

  1. トラタカ 視野
  2. ネティ 鼻腔上部(喉から)
  3. カパラバティ 気道下部(鼻孔から肺)
  4. ドウティ 消化管上部から胃
  5. ナウリ 腹部内臓(ナウリの準備段階としてアグニ・サラ)
  6. バスティ 消化管下部、特に直腸(消化器全体にはサンカ・プラクシャラナ)


クリヤの目的


  1. 例えば目や気道、消化管など体内部の管を浄化、すなわち体内の経路の汚れを取る。それにより不活性を取り除く
  2. 内なる気付きを深める
  3. 経路の過敏な反応を和らげる
  4. スタミナ、忍耐力をつける


クリヤの原理


  1. 外的媒体と意志によるコントロールにより体のシステムを刺激する
  2. クリヤの間、そしてクリヤ後は深くリラックスする


ジャラ・ネティ(鼻腔の浄化)


姿勢:タダサナ(山のポーズ)

やり方:

  • ネティ・ポットに満たした滅菌したぬるま湯に小さじ半分の塩を加える。
  • 両脚を開いて立つ
  • ネティ・ポットを右手に持つ
  • ネティ・ポットのノズルを右の鼻孔に入れる
  • 口は開けたまま楽に口で呼吸する
  • 頭をまずやや後ろに倒し、それから前、左と動かし、ポットの水が右鼻孔から入って重力で左からでるようにする。ポットが空になるまでそのままにする
  • 左側も同様に行う
  • 鼻腔に残った水を取り除くため、カパラバティのように左右交互に息を吐いて水を吹き出す



効果


鼻腔を浄化する。風邪、過敏、頭痛、副鼻腔炎、咽頭炎などを緩和し、嗅神経を刺激する。

禁忌


耳の感染症や鼻中隔の手術直後はネティを行わないこと。また、鼻血のあと数日間も避ける。





プラスチック製のネティ・ポット







2020年3月8日日曜日

ヨガ後のあの心地よさを持続する方法 
How to Make that Post Yoga Feeling Last

グループレッスンでは時々、忙しそうに帰る人を見かけます。
最後のシャバサナをしないでマットを丸めて帰ってしまう人。
終わった直後にスマホを取り出し大声で話し始める人。
もったいないなあと思います。
ーーーーーーーーーーーーーーーー



ヨガクラス後にくるあの素晴らしい感覚。安定し、リラックスし、繋がりを感じ、そして自由。
それは、何気なく携帯電話をチェックして動揺させる何かを読んでしまうまでのこと。まるでヨガなんか全くしなかったかのように。
突然、またストレスの街に戻ってしまう。


では、ヨギのみなさん、ヨガマットから離れた時間もヨガの効果を得られるように、どうすればあの感覚を維持できるのでしょう?


練習のときの効果に気付き、統合する時間を取るのです。
開き、呼吸し、伸ばし、支え、そしてまとめる、そんな時にはいつもうちなる反応があります。


その瞬間のそんな反応により気付きを得られるように自身をトレーニングすることで、一歩ずつポーズ毎にそして呼吸毎に、その効果を長期間累積していけるのです。


私が練習するときは、常に呼吸の練習や各ポーズがどのように始まり、中間はどうで、どのように終わるかをよく考えます。私の友人のシンディ・リーはこの3つの段階を「起(arising)」「続(abiding)」「結(dissolving)」と表現します。


私にとって「起」とは、ポーズに入るプロセスです。ポーズの基礎となる私の一部が深く床と繋がるよう、気付きに集中し体重を移動させる。その後に来るのが「続」、全ての動きを維持しながらそのポーズに必要となることに集中する。そして「結」、絹のようにスムーズな移行のため、体とマインドの質的な変化を作りながらポーズから出る。


「結」段階の後に4つ目の時間を持つことを、私は提案します。オウムを唱えた後の静けさ。練習の効果をより統合し維持させるための静かで個人的な時間です。



今この瞬間に繋がるには?



次のポーズに移る前に、今やったことを感じるために少し止まり、効果を吸収し、作ってしまった余分な緊張を解くことで、自身のために経験したそのメッセージや感覚を確認できます。



例えば、私が時々感じるのは・・・

精神的な安心:
• ほっとした!
• この課題は終わった
• ああ!疲れた
• 大丈夫。山の雪が溶けるように疲労も取れていく

体の気付き:
• まだポーズを撮ってるみたいにお腹が引き締まってる
• 心臓が鼓動してるのを今まさに感じてる
• 筋肉が深く弛緩してる、顔の筋肉も
• 体のこんな部分感じたことがなかった!すごい
• 体の部分部分の繋がりを感じてる

エネルギーの気付き:
• 落ち着いている
• 希望に満ちている
• 圧倒されている
• 収縮している
• 生命力がみなぎっている
• 洗い流された



時には呆然とすることもあります。ヘッドスタンドをした後、友人から「あなた大丈夫?」と尋ねらたことがあります。きっとヘッドライトに照らされた鹿みたいな顔をしていたのでしょう。


また、ポーズの後に歯がカタカタいったこともあります。ああ、何か間違ったことをしたに違いないと思いましたが、そうではありません。その後しばらくして、私の先生が他の生徒に、プラナ(生命力)をあまりにも強めると頭痛になることもあるというのを聞いたのです。歯がカタカタいうのも同じことだと思います。


かんぬきのポーズのように見た目はとてもシンプルに見えるポーズも、体がびっくりして硬く動かないこともあります。私はとても柔軟なので、とても驚くしそんな限界に出会ってがっかりもします。そういう時はすこし止まって呼吸をし、自分で快適に思えるところまでポーズを変えます。みんなと同じに見えるよりは体の判断にまかせるのです。


次のポーズへ、そして次へ、次へと追い立てられるようにすぐに移行するのはよい気分ではありません。うまくなるため頑張り続けてもっとやらなくちゃと私たちは考えるものです。ポーズの効果を融合する時間をとって、「私は十分ではない」という間違った考えをやめましょう。私たちは、十分以上なのですから。



内に入る


長時間働き社会と関係すればするほど、内に入って体と魂に栄養を与えることが不可欠となります。


外に出てより多くの人と繋がり、よりいろんなことをして、より良くなれと世の中では期待されるものですが、ずっと外に向かうより内に向かう方がより重要です。


マットの上でも同様です。より多くのポーズやより難しいポーズを追求するのではなく、今のポーズに奥底から調和していくことができます。まだできない挑戦を探すより、内を見て感覚を見つめ、練習の中でより多くの働きを得るのです。


思考、体の感覚、そして感情への気付きがマットの上においても日常においても選択と明快さを与えてくれます。


ポーズにより深く入って行っても良いという青信号がそこに点いていると思うかもしれません。けれど、より深く進むための開放感や呼吸、誘引が本当にそこにあるのかをとらえられるよう、少し止まって感じる時間をあなた自身に与えているでしょうか?うまくいっていないという信号に注意を向けましょう。歯のカタカタ、頭痛や無呼吸状態、めまいや痛みというのは全て少し引き下がって緩和しましょうというサインなのです。


ヨガによって得られる深い洞察力はすぐに現れます。


感覚という面で自分自身に何度も何度も注意を向けることができれば、日常生活でのヨガの累積的な効果はより大きくなるでしょう。マット上でのこうした体や自身への気付きの時間が、マットの外でもよりオープンで優しい、そして生命力にあふれた感覚をもたらすでしょう。日常で私たちの内側や周りで起こっている出来事に全身全霊で体験する能力を作りあげることができるのです。



前屈の実験


両手をブロックか椅子の座面に置く、あるいはハムストリングスが柔軟なら床に置き、立位の前屈をしてみましょう。背中が辛いと感じたら膝を曲げます。白内障や頭痛、副鼻腔炎がある場合は、代わりに頭を上げて背骨を伸ばしハーフ・ベンドになります。これでも両脚の後部や背中全体、時には首まで素晴らしいストレッチになります。このポーズのまま1分間か、10呼吸ほどホールドしましょう。


ポーズから立ち上がったら、ポーズの間ストレッチを感じていた体の場所に注意を向け続けましょう。まるで幻想ストレッチのようです。見たこともない体の部位(背中とか脚の後部とか)へのより深い気付きを目覚めさせ同調しているのです。


これらのストレッチは、支持や開放の経路を開放し近くの他の部位にも影響を与えます。体の全てがいかに繋がっているかを新しい方法で感じるかもしれません。ハムストリングスの硬さが減れば、腰が楽に感じるでしょう。腰が自然な曲線になれば、おそらく背中の上部が起立するために一所懸命働かなくてもよくなるでしょう。



あなたにどんな効果がありますか?


骨盤が軽くなって持ち上がったように感じますか?背骨がもっと立ち上がり空に向かって伸びていますか?


それから?


立位に戻ってもまだハムストリングスに制限をまだ感じているかもしれません。



このポーズの伝統的なものは半逆転で、脳が心臓より下になるので安らぎを感じます。全ての臓器の重力に対する関係性が変わります。ポーズから出たあとは、私はまるで最初からやり直しているような救われたような気分になることがあります。


ヨガポーズをする代わりに、自分自身の感覚が深くなり良い意味でより自分らしく感じるようになりました。いいことだと思います。ポーズの間に少し休止したり練習の途中で少しシャバサナをすることでそれはより増大します。ハムストリングスなど目で見えない自分の一部ですら感じられます。


複雑な人の体験の中で気づくことはたくさんあるのです。



空間の間に



グループのクラスでは、ポーズ毎、呼吸毎にずっと遅れることのないように付いていきたくなるものですが、ポーズの合間に時間を取って個人的に何を体験しているのかを感じるということは自己ケアなのです。これが自尊心を高め、練習の中でずっと集中したまま補助具を使ったりポーズを変更したりした方がいいのはどんな時なのかを知るために役立ちます。


私にとって、空間を見つけるもうひとつの時間はクラスの直後です。すぐに日々のやることリストを始めたり電話を取り出したりするのではなく、少し時間を取るようにしています。


私のいつものヨガクラスは5階で歩いて上がります。エレベーターはありません。なので少なくともロビーに降りるまでは電話をチェックしないようにしています。



これにより階段を降りる間、心は明晰で、クラスの効果が長く染み渡り、そしてずっと安全でいられます。階段を踏み外してころげ落ちるなんて練習の大きな邪魔になりますから。





(出典)https://yogainternational.com/article/view/how-to-make-that-post-yoga-feeling-last


2020年3月5日木曜日

後屈が得意な人がいる理由 
Why Some People Can Backbend More Easily Than Others

以前にもこのブログで紹介したのですが (あなたの脊柱、あなたのヨガ)、後屈の得意な人と苦手な人の違いって何?という記事です。
実は、私も数年前の陰ヨガのトレーニングで知ったのですが、後屈だけでなく、柔軟性と可動域についてはそれぞれの部位で同じことが言えます。
つまりは、見かけじゃなく、自分の感覚とそれに対する認識や感情のコントロールがヨガの本質ということですよね。バレリーナや体操選手のようにポーズする必要はないのです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


あなたのヨガの先生はあんなに凄い美しいバックベンドができるのに、なぜあなた自身は始める前から行き詰まっているのか不思議に思ったことはありませんか?その答えの骨子は、あなたの骨の形かもしれません!腰椎にはそれぞれとても多くの差異があり、それにはあなたの腰椎の数(4個から6個の間)やあなたの生まれつきの後方曲線(脊柱前弯)の量(29度から69度の間)も含まれます。




あなたの後屈に大きな影響を持つもうひとつの要因は、あなたの棘突起です。
棘突起とは、脊椎をなぞると感じる椎骨のぼこぼこした先のことです。大きな棘突起の人もいれば、1、2個完全に無いという珍しい人もいるのです!(図1参照)


図1 
形状や大きさ、棘突起の向きの違いを見てみましょう。
それぞれ、左が第一腰椎L1、右が第5腰椎L5です。
(Image courtesy of Paul Grilley.)



棘突起の差異


腰椎の主な動きは、屈曲(前屈)と伸展(後屈)です。これら動きの限界は、多くの場合緊張(特に屈曲)と圧迫(特に伸展)です。緊張は、組織が引っ張られて抵抗し、筋肉や筋膜、靭帯が硬くなることで起こります。後屈では、棘突起がお互いに「キス」し合っているのが主な圧迫の原因です(椎間関節もまた小さな要因ではありますが)。ですから、棘突起の大きさや向きというのは、後屈ポーズで入れる深さに対しとても重要なのです。もし棘突起が短く、狭く、角度も水平に近いならそれぞれの間のスペースが広くなり、突起が長く、広く、下向きの人よりずっと伸展しやすくなります。


腰椎の長さと角度の平均を示したのが下の表1です。約3000人の男女の平均値です。突起の大きさは比較的差異が小さいですが、角度の差異が大きいのに注目してください。差異が小さいということは標準値からの変化が狭いことを表しますが、差異が大きいと言うことは平均から大きく離れた人がたくさんいるということです。角度の差が大きいということは、生まれつき後屈が得意な人と、そうでない人がいるということです。



腰椎   突起長   突起角度   角度差
表1
腰椎棘突起の長さと角度の平均値。
標準偏差(SD)1では全体の68%が含まれるが、標準偏差2では95%まで含まれる。
(全てmm単位)


一般的に、女性の突起は男性よりも小さく角度が急な場合が多いが、これは単純に女性の方が平均的に体が小さいからでしょう。人種的背景の差異もあり、ヨーロッパ系の人は、アフリカ系の人よりも長く水平の棘突起を持っています。興味深いことに、年齢と共に曲突起は伸びる傾向があり、つまり歳を取ると後屈の能力を失うのですが、これは普通のことです。

図2
棘突起間のスペースをみてください。
aさんの脊椎はbさんより屈曲のための場所が狭い。
これはヨガでは変えられません!


図1の腰椎を持つ生徒が、図2のようにコブラ・ポーズをしているところを考えてみましょう。この二人が同じように後屈することはあり得ません!棘突起の間のスペースを見てください。ご覧の通り、右側の生徒の方が突起間の隙間が大きく、左の生徒の隙間はとても小さい。L4とL5の間には全く隙間がないほどです。彼の突起はすでにキスし合っており、この関節ではどんな伸展の場所も残されていません。しかし、彼の生まれつきの限界を変えることができないとか、注意と意思を持ってヨガの練習をすることができないということではありません。


もちろん、どんな時も他の組織での緊張が伸展を最大にする邪魔をする可能性はありますが、そうした制限を対処することにより、圧迫が起こるまで脊椎を伸展することは可能です。平均的に女性は男性よりも棘突起間のスペースが広いのですが、それが伸展の範囲を大きくさせ強い前弯を作ります。


図1の各突起の角度の違いを見てみましょう。表1では、各椎骨そして各個人で角度に大きな差異がみられます。標準偏差が大きい、つまり角度の違いがとても大きいです。これは、腰椎の角度がとても小さいか全く水平である人もいれば、大きな角度の人もいるということを意味します。一般的に、そして彼らの伸展の範囲は大きいにも関わらず、男性よりも女性の方が腰椎棘突起の角度は大きいのです。


また、図1の右の腰椎L2の棘突起の長さを見てみましょう。他のものよりも極端に短くなっています。解剖学の本のほとんどでは、脊柱の絵は全ての棘突起がほぼ同じ長さで描かれています。これは平均的な状況を表しているだけで、実際に誰かのものというわけではありません。ある研究では、女性の腰椎の棘突起の長さは 7.6 mm から 28.4 mm の幅があり、それはほぼ4倍もの差になります!男性では、8.9 mm から 33.5 mm となっています。他の全ての要因が同じでも、突起が短ければ長い時よりもより広い範囲の動きが可能になります。


どれくらい後屈できるかは、最初はあなたの組織がどれくらい張力抵抗しているかによります。例えば硬い腹筋や股関節屈筋は脊椎の伸展を制限します。しかし、体の前面の緊張を解いたあとは、やがて骨同士が圧迫し合うところで止まることになるでしょう。そこが、あなたの限界なのです。後屈の時どんな感覚がありますか?脊椎の圧迫?もしそうなら、すでに限界に達していると受け入れて喜んでそこに留まりましょう。






最後に


棘突起の長さの差異から起こる興味深い錯覚があります。棘突起がより短いあるいはより長いと、腰の脊柱前弯が大きくあるいは小さく見えます。下の図3はそれを表しています。臨床医学者もヨガ指導者も、患者や生徒が脊柱前弯が不足ぎみだと思った際、それは実際には前弯が正常であるにも関わらず棘突起が正常よりも長いかもしれないということに気付かねばなりません。前弯の度合いについては見かけだけで判断してはならないことに注意しましょう。


図3
見かけに騙されないで!
脊柱前弯の度合いは棘突起の長さで隠されている可能性があります。

(a)は、棘突起が長い腰椎、(b)は通常の長さ、(c)は通常より短いものです。これらの3つの場合、実際の前弯を示している脊椎の前のアーチは全く同じなのですが、脊椎の後ろの曲線はかなり違って見えます。(a)の前弯は小さく見えますが(c)の前弯はずっと大きく見えます。






*この文は Bernie Clarkの Your Spine, Your Yoga—Developing stability and mobility for your spine からの抜粋です。