2021年2月26日金曜日

ヨガは神経システムにどのように影響を与えるのか 
How Yoga Affects Our Nervous System


神経システムについて、その素晴らしさ、そしてどのようにヨガがよい影響を与えるのかについて耳にしたことがあるかもしれません。神経システムを落ち着かせ穏やかに調整するのに役立つヨガの特別なテクニックについて聞いたこともあるかもしれません。もしかすると、神経システムの詳細についても聞いたことがあるかもしれません。


しかし、この複雑なシステムとそれがもたらすことについて本当に理解しているでしょうか?実際のところ、神経科学者でさえ神経システムを完全には理解できてはいない一方で、基本的な局面についてわかっているところもあり、ヨガが、それを調整するのに役立つというエビデンスも増えてきています。



神経システムとは?


人間の神経システムは、並外れて複雑で、その大部分は未知の部分ですが、運動を起こすため電気的・化学的エネルギーを発し、脅威を察知し、消化を行い、心拍を調整し、呼吸を行い、思考する、など多くのことに関わっています。


神経システムは大きくふたつの分けられますが、多くの人が考えているのとは異なり、交感神経と副交感神経ではありません。 そうではなく、中枢神経系と末梢神経系です。


中枢神経系は脳と脊椎を含みます。末梢神経系は、中枢神経系意外の神経組織であり、神経繊維や神経節(ニューロン細胞の塊)を含みます。


末梢神経系はさらに、自律神経系(呼吸などの不随意機能をコントロールします)と、体神経系(歩くなどの随意機能をコントロール)に分けられます。



自律神経系とは?


不随意機能の中枢として、自律神経系はさらに、交感神経(「逃走闘争」部分)と副交感神経(「休息消化」部分)、そして腸神経系(内臓部分)に分けられます。


ヨガは全ての神経系に影響を与える可能性がありますが、ヨガの指導者や実践者はまず交感神経と副交感神経に注意を向けがちなのは、それらが実践によってより直接影響力のある部分だからです。



副交感神経とは?


交感神経系は、多くの場合「逃走闘争」反応に関連付けられます。これの部分は、体が危険の可能性に警戒する役割を持っています。


私たちが危険を察知すると、心拍が上がり、瞳孔が開き、呼吸数が上がって、新鮮な酸素の多い血液を脳に送ります。私たちの体はまた、呼吸や心拍、感情など全てを調整する神経伝達物質やエピネフリン、ノルエピネフリンなどのホルモンを送り出します。消化器官は、ほとんど働きをやめ、大切な酸素が豊富な血液を骨格筋に送ります。こうした様々なことが、ほとんど一瞬で起こります。こうした変化が、究極的には脅威と闘うかその場から逃げる準備をするのです。これが、交感神経反応が自動車のアクセルペダルと類似している理由です。アクセルをいっぱいまで踏み込むと、全力で前へ走り出すのです。


しかし、私たちの体はとても賢く、交感神経系も生活スタイルの変化に飲み込まれたりはしません。例えば、体は生死を分ける脅威へのストレスと大切な会議のストレスをうまく区別しません。つまり、うるさい上司という脅威を、私たちの体はライオンに襲われる脅威と同じように受け止めるのです。


さらに、こういったストレスは慢性化します。毎晩、帰宅した後にもしょっちゅう送られてくる仕事のメールで、交感神経状態のままになり、慢性的に心身にストレスを受け続け、やがてはストレスに関連した病気だらけになってしまうのです。さらに、慢性ストレスによって内分泌系に刺激ホルモンをもっと作るよう信号を送り、体内のストレス反応の周期が継続されていくことになります。


しかし、ヨガの世界での悪い評判にもかかわらず、交感神経系は、実は私たちが完全であるために不可欠な部分です。危険と直面した時に安全を確保するためだけではなく、体全体のバランスをとるという複雑な基盤の重要な一部なのです。


実際、ヨガの練習の時は、交感神経系が活性化しています。より動的でより速いペースのフローやより長いホールド(より困難な)は、交感神経反応を刺激します。チャトランガへジャンプバックする時、心拍数が上がります。逆立ちのポーズで止まると、血液を骨格筋へと流す準備をします。ウォリアー3でバランスを取ると、神経伝達物質が多量に分泌され、活力を与えるホルモンが血管の中を流れます。この神経系の活性化はまた、ランニングなどの激しい運動をする時にも起こります。


つまり、交感神経系を刺激することは、実際は、全く健康的で普通のことなのです。  



副交感神経系とは?


副交感神経系は、多くの場合、「休息と消化」反応と言われます。自律神経のこの部分は、交感神経反応を抑制します。


「ブレーキ」と呼ばれることの多い副交感神経系は、心拍数を下げ、消化を刺激し、呼吸速度を下げ、血流を四肢から生命維持に必要な内臓へと戻し、アセチルコリンなどの穏やかにする神経伝達物質を分泌させます。


この神経系はまた、ヨガの実践では崇められており、過剰にストレスを受けた体や心をリラックスするのに役立つためです。リストラティブヨガなどの実践を、特にリラックスのために、より穏やかな状態になるように行います。


しかし、この神経系がヨガの世界では一般的によいものだと見えると言って、常に副交感神経系を活性化させる必要があるというわけではありません。交感神経と副交感神経の両方の間を、ごく自然に揺れ動くことができるのが健康です。そして、この揺れ動きを心拍数の変化で計測することが可能です。



心拍数の変異性


健康な人が息を吸うと、自然に、交感神経系が刺激されて心拍数がやや上がります。息を吐くと、副交感神経系が刺激されて心拍数はやや下がります。この心拍数の変異性は、全体的な健康の目印となります。一般的に、交感神経系と副交感神経系の間を素早く簡単に変動できる方が、全体的に、より健康的な神経系であると考えられます。


慢性的にストレス反応から「抜け出せない」人は、心拍数変異性に乏しいため、心拍数はおそらく慢性的に高いままでしょう。反対に、自律神経の健康的なバランスを保っている人は、心拍数変異性が高いため、ストレスの多い状況の後でもすぐに下げる調整が行えます。


ストレスにすぐに反応することが大切です。しかし、ストレスが過ぎたら容易に落ち着けることも大切なのです。ここで、ヨガの出番です。




ヨガが自律神経系に与える影響とは?


ヨガを通して自律神経系に影響を与える方法はたくさんあります。以下は、ヨガが自律神経系の異なった部分を刺激するのに役立つ方法のうちのいくつかにすぎません。


ダイナミックなヨガ


アシュタンガやパワーヨガ、ヴィンヤサなどのダイナミックなスタイルのヨガやエクササイズは、すでに言った通り、交感神経系を刺激できます。  これは激しい動きへの健康的で普通の反応であり、免疫の強化、呼吸機能の改善、循環器の健康増強などに役立ちます。


リストラティブ・ヨガ


リストラティブ・ヨガには反対の効果があります。その名の通り、リストラティブ・ヨガは、心身ともにとても穏やかでリラックスさせるものです。いわゆるリラクゼーション反応を刺激し、神経を副交感神経モードに移し、穏やかさや安心感、心地よさ、健康的な消化などを促進します。


プラナヤマ


プラナヤマは、自律神経系に作用する実に早く効果的な方法です。実際、上記のように、毎回呼吸をするたびに自律神経に影響(心拍数変異)を与えています。

迷走神経の一部が、喉頭や呼吸横隔膜を通っているため、呼吸はまた瞑想神経緊張にも影響を与えます。瞑想神経の活動量が迷走神経緊張です。迷走神経には多くの副交感神経繊維があ流ため、迷走神経が受ける刺激が強いほど副交感神経系が活性化されます。

呼気を長くするなどの特定の呼吸法は、特に副交感神経系と関係が深く、体を「休息と消化」反応へと移すことができます。反対に、吸気を強めると反対の効果があります。


シャヴァサナ


シャヴァサナで練習を終えるのもまた、自律神経系に影響を与えます。このポーズは落ち着きや内省を促すため、心拍数や呼吸速度などをゆっくりにし、特に刺激のある動的な練習の後には効果的です。その簡単な外見にもかかわらず、副交感反応を開始し神経系を鎮めるために大変効果的な実践法です。


瞑想


瞑想は、鎮静効果のあるもうひとつの実践法です。心身が平穏な時、私たちは慢性的に抱えている緊張を手放し始め、副交感神経系を刺激します。




ヨガの練習と総合的な健康の鍵はバランス


私たちにの体内の全ては、常に、総合的なホメオスタシスのために適合と調和を得ようと働いています。

ストレスの多い世界に生きる私たちは、副交感神経系を刺激するような練習から効能を得ることができます。しかし、それは交感神経系を全く無視していいというわけではありません。忘れないでください、本当の健康の指標は、どちらの神経系が活性化しているかではなく、どれほど効率的、効果的に素早くそれぞれの間を移り変わることができるかです。

結局のところ、生きている中で前進するには、アクセルとブレーキの両方が必要なのです。全速力で壁にぶつからないよう、適切な道具を適切なタイミングで使うことがでければいけません。そして幸いなことに、その道を進むために役立つヨガが、私たちにはあるのです。







(出典)https://yogainternational.com/article/view/how-yoga-affects-our-nervous-system

2021年2月19日金曜日

平均以上の可動域が必要な4つポーズ(追加) 
4 More Common Poses That Require Greater-Than-Average Mobility

前回に続き、可動域に関する追加の記事です。
こうなってくると、よく出てくるポーズのほとんどが、インスタで見るような形にはなれないかもしれないと気づくかもしれません。
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人はみな、形もサイズも違っていて、プロポーションが違い、生活スタイルも習慣も違うということを私たちはわかっています。けれど、ヨガマットの上に立った途端、なんとなくその違いを忘れてしまい、全てのポーズで同じ形、角度になると期待してしまいます。


教科書通りのアライメントは、多くのポーズで、(下記のように)基本的だと思われているものでさえ、平均以上の可動域を必要とします。けれど、「平均」とは計算して出てきたものであり、誰も実際に「平均」な人はいません。一般的に、私たちは平均よりも可動域が大きいか小さいのです。肩には大きな可動域があるかもしれないし、股関節では小さいかもしれません。もしくは、左右に可動域に差が出るような姿勢や仕事、スポーツが原因の筋肉の緊張を抱えているかもしれません。


なぜなら、私たちはみなユニークで、全てのヨガポーズで理論的に理想的にするために自分の体に無理をさせることは意味がありません。ですから、練習を探求と調査の機会ととらえ、自身の関節や筋肉、筋膜などのユニークな組み合わせを知る機会としましょう。


では、「平均」の可動域とよくあるヨガポーズの「伝統的な」バージョンを比べていきましょう。




1.戦士のポーズ1(ヴィラバドラーサナ1)


後ろの足首背屈 20−30° (平均 12-20°)
後ろ足の内反30-45°  (平均 5-35°)
肩の屈曲 180°   (平均 165-180°)

 
戦士のポーズ1(ヴィラバドラーサナ1)は、集中とエネルギーを上にもち上げて、力強い土台を作ります。後ろ脚の股関節屈筋をストレッチし、胸を開き、肋骨の横から広背筋を伸ばします。この基本的なポーズが、太陽礼拝Bの鍵となることを踏まえれば、このポーズは誰でもが可能なものだと考えるかもしれません。しかし、両腕を頭上に伸ばすことが困難な体がある一方で、多くの人にとって、このポーズの伝統的なアライメントを妨げているのは後ろの足首関節の可動域です。後ろの踵を地面においたまま、骨盤を前に平行にするのは心地よいものではなく、多くの生徒にとっては不可能ですらあり、前の膝を曲げ得るとその難しさはより深まります。このポーズで多くの人が追求しているアライメントは、足首の通常の可動域を超えているため、難しいのは当たり前なのです。


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2. 戦士のポーズ2(ヴィラバドラーサナ2)



後ろ足の内反 35-45° (平均 5-35°) 
前の股関節の外旋 70-90° (平均 40-50°)
前脚の外転 70-90° (平均 40-50°)  



戦士のポーズ2(ヴィラバドラーサナ2)は、安定した、固い決意を持った、力強い立位のポーズです。両足がしっかり床について、両腕は肩の高さ、これはこのリストの中で最もやりやすいものです(股関節の通常の可動限界という条件があれば)。


しかし、「教科書通り」のアライメントは、前脚を真っ直ぐ前に向けて90度に曲げ、股関節をマットのサイドに向けていますが、これは、特に前の股関節と後ろの足首に、ほとんどの体型の人よりもずっと広い可動域が必要となります。戦士のポーズ1のように、前膝を深く曲げるにつれ、後ろの足首の可動域がより必要となります。


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3. 牛の顔のポーズ(ゴムカアサナ)



上の肩関節屈曲 180° (平均 165-180°)
上の肩関節外旋 80-90° (平均 80-90°)
下の肩関節内旋 60-90° (平均60-90°)
股関節外転 30° (平均 20-30°)
下の股関節外旋 60-85° (平均 40-50°)
下の股関節外旋 50-70° (平均 40-50°)





牛の顔のポーズ(ゴムカアサナ)に関連する動きの組み合わせは、体のさまざま部位の効率的なストレッチとなります。腕の位置は、胸と肩のほとんど全ての筋肉に影響し、慢性緊張のよくある原因(三頭筋、広背筋、三角筋)をも含みます。そして、股関節を開くヨガポーズの多くが股関節を外転する一方で、ゴムカアサナは、両脚を体の中心線で交差させます。しかし、このポーズの複雑さはまた、どうして多くの人にとってこのポーズが難しいのかを説明しています。ひとつの局面では可能でも、他のところで伝統的アライメントの達成が難しいのかもしれないからです。


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4. 弓のポーズ(ダヌラアサナ)


股関節伸展 20-30° (平均 10-30°)  
肩関節伸展 80-90°(平均 40-50°)  
脊椎伸展(胸椎・腰椎) 50-75° (平均 35-55°)



胸を開く後屈は、肩を前に引いて胸を圧迫するという日々の姿勢への強力な対抗策です。そうした理由から、姿勢と呼吸の両方に効果があります。仰向けの後屈はより効果的かもしれませんが、頭と肋骨を重力に逆らって持ち上げることは、忘れられている体の背面を強化しることができます。弓のポーズ(ダヌラアサナ)は、この分類に入ります。しかし、両腕と両脚が繋がっているため、コブラ(ブジャンガアサナ)やバッタ(シャラバアサナ)のようなものより大きな可動域が必要となります。


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気づいていようと気づいていないであろうと、私たちはすでにそれぞれのヨガポーズを行う自分自身の道を見出しています。私たちの体は、私たちが理解しているよりも適応性と弾性がありますが、同時に限界もあります。全ての人に、全ての関節の動きに限界点があり、ヨガポーズでは、他の日常の活動以上にその限界点に直面することが多くあります。それは、基本とされているこうしたポーズにおいても、言えることです。その知識が、理論的な理想を手放し、肉体的な練習を変化させてくれるでしょう。心を開いて、私たちの練習の行く先にあるものに好奇心を持って、マットの上に立ちましょう。

2021年2月12日金曜日

平均以上の可動域が必要な5つのポーズ 
5 Common Poses That Require Greater Than Average Mobility


人の顔がひとりひとり違うのと一緒で、同じ体の人は一人としていません。大きさも長さも重さも角度も違えば、その部分部分を使って出来上がる形や動きもみんな違います。陸上競技に向いている人や器械体操に向いている人、重量挙げやレスリングに向いている人など、いろんなものの好みが人によって違うのと同じくらい、体の構造も違います。では、ヨガに向いている人と向いていない人がいるのでしょうか?いいえ、ヨガは誰にでもできるものです。では、みんなが同じポーズをしなければいけないのでしょうか?
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この記事では、Yoga Medicine®の指導者であるレイチェル・ランドが、お馴染みの5つのポーズを深く掘り下げ、アサナに対してよりオープンマインドなアプローチをする重要性について説明しています。




もし、生徒たちにやめさせたいことが一つあるとしたら、それは、「忍耐と努力で誰もが成し遂げられるポーズの形というのはたったひとつしかない、その理想形でないものは全て間違いだ」と信じることです。そういった誤解が多いのは、生徒たちから受ける多くの質問やコメントからわかります。「ダウンドッグでどうすればかかとが地面につくようになりますか?」とか「いつになったら、足を組んで座る時に両膝が床につくほど股関節が開くようになるでしょう?」とか「私のハムストリングスは硬いから、このポーズは苦手です」というような。


けれど、問題は生徒自身にあるのではなく、そのポーズやそのポーズが「どう見えるべきか」という期待にあるとしたら?というのも、基本的なヨガポーズでも必要とされる可動域を分析すれば、その多くが平均的な可動域を超えていることがわかるからです。


私たちのどんな関節の可動域も平均より大きい小さいがあり、つまり、ヨガポーズの理想形は可能かもしれないし不可能かもしれないということです。ありがたいことに、練習の恩恵を得るのに理想的である必要はなく、そこには、体力、安定性、バランス、集中力などが含まれます。そして、特定の形にポーズを取る必要性を手放した時、自身の個性的な身体の構造を尊重しながら、ポーズの恩恵を受けるためのスペースを作ることができるのです。




では「平均的な」可動域とは?


さらに進む前に、「平均的な」可動域とは何かを見ていきましょう。理学療法士や運動の専門家などが通常用いる可動域チャートは、大勢のサンプルにわたる特定の方向に対する関節の限界価を測定したものです。ですから、平均というのはそれらのサンプルから算出されていて、最も柔軟な人と最も柔軟でない人のおおよそ中間に当たります。


もちろん、可動域が平均よりも大きな人もいれば小さな人もいますが、平均値を理解することで練習の中で可能なことに対する期待をコントロールするのに役立ちます。




可動域は大きくできるのか?


端的に言えば、柔軟性とは、筋肉と筋膜の弾性、そして骨の形状と比率による強力な限界のあらわれです。限界を作っているのは、筋肉張力なのか骨の圧迫なのかはどのように知ることができるのでしょう?軟組織の張力は、関節の、動こうとしている方向と反対側にあることがほとんどです。例えば、前屈ではハムストリングスに引っぱりを感じます。骨の圧迫は関節の同じ側に感じます。前屈では、関節がぶつかっている前面の深い組織を感じ、それ以上の深い屈曲を妨げています。


ヨガによって、時間とともに軟組織の柔軟性が高まる可能性があるので、特定のヨガポーズでそれ以上深く動いていくのを妨げているのが筋肉張力であれば、そこに関連する筋肉をストレッチすることで可動域を大きくすることは可能でしょう。しかし、人の骨格というのはそれぞれ異なっており、変化しないので、全ての関節の可動域の限界は人それぞれだというわけです。


もし骨の圧迫がヨガポーズに限界を作っているのなら、骨による制限を避けるために位置を変えてアライメントを調整する方法があります。けれど、それをするには、教科書通りのポーズへの執着を手放し、よりオープンマインドなアプローチをする必要があります。


では、このアプローチによって改良される可能性のあるポーズをいくつか見ていきましょう。全てのレベルのクラスでよく行われ、平均以上の可動域が必要となるポーズです。




1. 下向きの犬のポーズ(ダウンドッグ)


股関節屈曲 90° (平均70〜90°)
肩屈曲 180° (平均165〜180°)
足首の背屈 45° (平均12〜14°)


ダウンドッグ(アド・ムカ・シュヴァナーサナ)がヨガクラスの定番なのには、正当な理由があります。ハムストリングスやふくらはぎ、大胸筋や広背筋をストレッチするポーズです。また、上半身と下半身のバランスを作るのに役立ち、両手でより楽に体重を支える準備となります。


下向きの犬のポーズは大抵休憩のポーズで使われますが、首の横を圧迫しないで両腕を挙げ、背中を丸めないで両脚を伸ばし、踵を床につけようとするのはとても休憩ではないと感じる人は多いはずです。こうした困難は、肩や股関節、足首に平均以上の可動域が必要だからだ、とは想像しないでしょう。


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2. 立位の前屈

股関節屈曲 160〜170° (平均70〜90°)



ヨガスタジオを見回して難なく二つ折りになっている生徒をみれば、立位の前屈(ウッターナサナ)は簡単なポーズだと思わざるをえません。けれど、ダウンドッグで平均以上の股関節可動域が必要だとわかった今、ウッターナサナはもっとずっと大変だということがわかるでしょう。


前屈はハムストリングをストレッチし、背骨と首を優しく牽引し、内側への集中を養う機会となります。けれども、胸と膝、あるいは頭とすねをくっつけるという目標は、ほとんどの人には単純に不可能なことです。股関節の平均可動域は、両脚を伸ばした状態では70〜90°で、前屈の半分にもなりません。このポーズにはある程度の変更が必要だという人がほとんどだということを示しています。


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3. 上向きの犬のポーズ(アップドッグ)


足首底屈 80°(平均20-50°)
背骨伸展 70-80°(平均35-55°)
手首伸展 90°(平均65-85°)



上向きの犬のポーズ(ウルドゥヴァ・ムカ・シュヴァナーサナ)は、一般的に、腹筋や股関節屈筋など、体前面の固まった筋肉をストレッチします。また、足の甲の筋肉を伸ばすという稀な機会を与えてもくれます。このポーズを含めた太陽礼拝はまた、より深い後屈に応用できるアライメントのレッスンにもなります。
しかし、手首や背骨、足首に驚くほど広い可動域が必要となるため、ヴィンヤサの練習の中で予想外に難しい部分となっています。


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4. 三角形のポーズ(トリコナサナ)


股関節外転 80-90°(平均40-50°)
股関節屈曲 90°(伸展した脚での平均70°)
股関節外旋 80-90°(平均40-50°)



開いた三角形のポーズ(ウッティタ・トリコナサナ)は、全レベルのクラスのシーケンスに取り入れることのできる素晴らしいポーズです。前脚のハムストリングスのストレッチ、中臀筋と体側上部の腰方形筋の偏心の強化、微細な開胸、そして両脚を床につけてバランスと安定性を築く機会を与えてくれます。けれども、このポーズがきついと思うのは、あなただけではありません。通常以上の前脚の可動域を必要としますし、特に手のひらを床に付けようとすると尚更です。


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5. 座位のツイスト(アルダ・マツエンドラサナ)


股関節内転 45-50°(平均20-30°)
腰椎・胸椎回転 90°(平均40-70°)
股関節外旋 80-90°(平均40-50°)



座位のツイスト(アルダ・マツエンドラサナ)は、ヴィンヤサクラスでよくみるポーズで、立位ポーズと床でのポーズの間の移行に使われることも多くあります。姿勢の癖を変えて、安定した土台から背骨を自由に動かすのに役立ち、私たちの観点も変える可能性もあります。また、股関節の外側や腿の筋肉を解放する素晴らしい機会を与えてくれます。しかし、このポーズを部分的な変更なしで行うには、背骨や股関節に平均以上のかなりの柔軟性が必要となります。



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私に透視能力はありません。生徒さんの骨や結合組織の構造は見えません。彼らの可動域が平均より上なのか下なのか、わかりません。ダウンドッグで踵が床につくことがあり得るのか、前屈で胸が腿につくことがあり得るのか、わかりません。幸いなことに、こうしたことをやるように伝えることが、指導者としての私の目標ではありません。効果のある結果をもたらすようなヨガの体験をしてほしいのです。




生徒さんたちをより現実的な可能性に向けて導くことで、イメージされるアライメントの概念から外れたものは間違いだという考え方から彼らを解放することができます。つまり、肉体だけの力づくの決意ではなく心を開いた好奇心を養うことができ、各ポーズの理想形ではなくポーズの効果を重要視することができるようになります。私について言えば、このアプローチは、ヨガの本質へとより近づく道になります。





(出典)https://yogainternational.com/article/view/5-common-poses-that-require-greater-than-average-mobility

2021年1月29日金曜日

加齢に最も影響される脳領域をヨガが強化する可能性 
Yoga May Bolster the Brain Regions Most Affected by Aging

脳スキャンの研究が、記憶、感情、思考に関する領域への伝統的な実践の効能を示唆



ヨガは、伝統的な東洋医学に深く関連しており、身体をエネルギー経路と結びつきのシステムだと捉えています。そしてそれは西洋医学とはなかなか一致するものではありません。しかし、今世紀の始めから、ヨガの科学研究が格段に増えました。近年の多くの研究が、ヨガを、腰痛や鬱、不安症や神経痛などの治療の「代替療法」として使われていることを評価してきています。しかしまだ、ヨガの研究の質は偏っており、多くは自身で報告する統計データに依存しています。そういったことから、より客観的な測定、脳スキャンに焦点をあてた2019年の論文に私は驚嘆しました。決定的ではないものの、その結果はヨガが脳の健康を向上させることを示唆しており、ヨガと科学がともに歩める道を表しています。


イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のスポーツ心理学研究所のディレクターであるナハ・ゴテが率いた論文では、ヨガの脳に与える影響を評価するためにあらゆるタイプの脳をスキャンした11の査読された論文を調査しました。ゴテと研究者たちは、ヨガに関して次の三つの要素を含んだ研究に限定しました。身体的なポーズ、呼吸法、そして瞑想とマインドフルネスです。おおむね年齢や健康状態、運動レベルなどが一致している被験者で、長期間の実践者とヨガ初心者の脳を比較していたのは6つの研究でした。5つの研究が、ランダムに特定期間のヨガの実践をさせ、その前後で被験者の脳をスキャンし、コントロール・グループと比較調査していました。


ゴテは、これはまだ「初期分野」であり、ほとんどの研究が小規模だと認めています。しかし、さまざまな母集団ではあるものの、3つのパターンが一致して浮かび上がっています。ヨガの実践は、記憶の鍵となる海馬の灰白質の体積増加、高次認知機能がある前頭葉の特定部分の体積増加、そして、デフォルト・モード・ネットワークの相互連結の拡大に関係している可能性があるのです。このネットワークは、記憶や感情を処理すること、そして「自己反映プロセスと呼ぶ、自分自身についての情報処理」を行っていると、ウェイン州立大学の認知神経学者であり共同執筆者であるジェシカ・デモワソーは説明しています。彼女によれば、これらの領域の灰白質が多いことの意味は完全に明らかではないけれど、「より高度な機能であることを示すかもしれないニューロン間の関係がより密接になっているのかもしれません」


デモワソーの研究は、脳内の加齢に関連する変化に焦点を置いており、加齢とともに、特に認知症の場合は収縮しがちである構造がヨガによって強化されているようだと言及しています。ヨガの結果増えた体積は、有酸素運動の研究で見られるものをよくにています。これはこんな問題を提起しています。これは本当に瞑想の要素をもつヨガに特別に見られるものなのか、あるいは他の脳を維持させる運動と同じなのでしょうか?


現時点で断言することは困難です。「ヨガの素晴らしいところは、自分にとって良いことさまざまなこと全てを組み合わせるということです」しかし「それは研究するにはやっかいなこと」と、国立衛生研究所の一部、国立補完統合衛生センターの上級研究者であるキャサリン・ブッシュネルは述べています。これまでの小規模の研究観察では、脳の構造や機能の変化とヨガの因果関係を立証するのは困難です。例えば、ブッシュネルの研究では、経験豊かなヨガ実践者はヨガをしない人と比べて痛みに対する耐性が大きく、その耐性は島皮質と呼ばれる領域の灰白質の増大に関係があります。しかし、ヨガがその直接の原因だとは言えません。「ヨガをしたいと思うのは人格が関連しているのかもしれませんし、その人格が灰白質の増大に関係しているのかもしれません」




小規模の実験を基礎としたより良い研究とともに、より明確な答えが出てくるでしょう。例えば、ゴテが最近政府の補助金受けた研究では、任意に選んだ168人の高齢者に6ヶ月間、ヨガ、エアロビ、ストレッチや筋トレを行わせる予定です。各活動が脳の構造と認知機能に与える影響の違いを比較することが目的です。ブッシュネルはこう言及しています。「まさに私たちが必要としているのはこうした試験です」

2021年1月2日土曜日

頭痛のための5つのポーズ
5 Poses for Headache Relief



どのようにして「頭痛の危険要因」を避けるのか
ストレスを緩和するヨガポーズがいかに頭痛を持続的に緩和してくれるのか




私は子供の頃から頭痛に悩まされてきました。毎年の健診で私は医師にどうすればいいのかを尋ねたものです。先生は「方法はあまりないね」と答えるのです。「アスピリンを飲んでごらん」大人になった今でも、医師たちは同じアドバイスをします。数年前、偏頭痛の薬を処方されました。頭痛はノックアウトできましたが、その後1日中私自身もノックアウトされてしまったのです。


私が本当に聞きたかった助言は、薬が必要になる前に頭痛を止める方法でした。私が気づいていたのは、頭痛が起こりやすいのはストレスを感じた時、一日中きちんと食べなかった時、赤ワインを飲んだ時、そしておかしく聞こえるかもしれませんが雨の日です。これらのは頭痛を防ぐヒントになったのでしょうか?


ジョンズ・ホプキンス大学の準教授である神経学者であり、「Heal Your Headache: The 1-2-3 Program for Taking Charge of Your Pain(あなたの頭痛を癒す:痛みのための1-2-3プログラム)」の著者であるデイヴィッド・バックホルツ博士は、頭痛に対処するこのような防止法を主張しています。最近、私はバックホルツ博士と頭痛の原因、そしてヨガや健康的な習慣がどのように頭痛の辛さを防いだり緩和することができるかについて話をしました。彼は、頭痛に関するアドバイスを初めて私の直感で理解できた初めての医師でした。


頭痛は、ストレスやホルモンの変動、不眠、天気の変化、特定の薬品などのトリガーに晒された時に起こります。


頭痛がやってくるときは、大抵私にはわかります。肩や首が緊張して硬くなります、なので、硬くなった筋肉が頭痛の原因かと考えていました。そうではない、とバックホルツ博士は言います。顔や首の血管の腫れや圧迫が頭痛の原因だというのです。


ストレス性、緊張性、そして偏頭痛を区別している多くの医師とは異なり、バックホルツ博士は、偏頭痛を最大とする痛みの連続系だと考えています。彼によれば、緊張性やストレス性の頭痛と一般的に考えられているものは、単に同じ病気の弱いバージョンです。


頭痛は、どの強度であっても、ストレスやホルモンの変動、不眠、天気の変化(特に気圧)、特定の薬品、特に避妊ピルやホルモン補充療法などのトリガーに晒された時に現れます。食事、睡眠習慣、そして女性には月経周期などずべていつでも頭痛の「トリガー負荷」に関係しています。トリガー負荷の閾値が他の人より低い人がいて、そういう人たちにはより頻繁に頭痛が起こります。しかし、これらのトリガーのいくつかを減少させることで頭痛をコントロールすることができます。



”頭痛の「トリガー負荷」を減らす


バックホルツ博士によると、頭痛を起こす特定の食べ物を排除することは大きな違いをもたらします。残念なことに、原因となる食べ物には大好きなものも含まれます、チョコレートやチーズ(特にブルーチーズや熟成したチェダーなど)、ヨーグルト、バナナ、柑橘系や果物のジュース、ピーナツバターなどです。多くの場合はパッケージに「天然うまみ調味料」と書かれ、レストラン(中華だけでなく)でも使われているMSG(グルタミン酸ナトリウム)は、頭痛の原因のひとつとして知られています。硝酸塩(肉の保存に使用)やアルコールもまた、アルコール飲料と同様、原因のひとつです。他のものよりもよくないアルコールもあります、赤ワインやシャンパンは最も耐えがたく、頭痛に対してはウォッカが最も扱いやすく、白ワインやビールはその中間になります。頭痛をコントロールするためには、これらを排除し、ひとつずつ取り入れてみてどれが頭痛の原因かをさぐるといいと博士は勧めています。



頭痛のリバウンドを防止する


その他の頭痛の原因はカフェインです。最初は、腫れた血管を収縮させることで頭痛をすぐに緩和してくれます。しかし、最初の効果がなくなれば、血管はさらに腫れ上がり、「跳ね返り」頭痛の周期を作ってしまいます。それを踏まえ、カフェインを完全にやめることも有効ではないかと博士は言います。数日から1週間の頭痛を耐えて、そのあとの長期間の頭痛の回数や強度が下がるかを見てみるのです。


同様に、エキセドリン、タイレノールなどカフェインが含まれる市販薬は短期間緩和してくれますが、薬への依存の周期を促進します。処方の偏頭痛薬も同じ効果があります。アスピリンやタイレノールの使用は安全ですが、市販薬を日常的に使うなら、全体的なトリガー負荷を減少させることで防止する必要があると博士は忠告しています。



緩和法を見つける:ヨガはどのように役立つのか


頭痛の主なトリガーのひとつがストレスですから、ストレスを緩和し管理する方法を見つけるのは防止するためには必要な部分です。バックホルツ博士は、頭痛持ちには、定期的で継続的なヨガの練習を、そして週数回の早足や水泳などの有酸素運動で補うことを勧めています。夜間の十分な睡眠とともに、これらがストレスを緩和し、エクササイズ中に分泌されるエンドルフィンが頭痛の防止に役立ちます。頭痛の最初の兆候が現れたら、仕事や家事などを一旦やめて鎮静するヨガのポーズを練習する時間を作ると良いと博士は助言しています。




では特に私に効いたポーズをいくつか紹介しましょう。可能なら、頭痛が始まりそうな時にこのシリーズを練習し、またとてもストレスの多かった日の防止法として利用してみましょう。



チャイルド・ポーズ(アド・ムカ・ヴィラサナ)


体の前にボルスターを水平に置き床に膝をつきます。つま先を揃え、両膝を広く開いて、胴部と両腕を前方に伸ばします。反対の肘をつかんで額をボルスターに置きましょう。目を閉じて完全にリラックスし、そのまま3ー5分間ポーズを続けましょう。



上向きの合蹠のポーズ(スプタ・バダコナサナ)



ボルスターの上に折り畳んだブランケットを置きます。顔がボルスターと逆を向くようにボルスターの前に座り両足を揃え、両膝は開いて床へ下ろしましょう。必要なら、それぞれの膝の下にサポートとして折り畳んだブランケットを追加します。仙骨にストラップをかけ、腰、脛、そして足の下に回します。しっかり支えられていると感じるまで、ストラップを締めましょう。ボルスターの上に横たわって頭をブランケットに載せましょう。そこでリラックスして5-10分間休みます。




ボルスターを使ったブリッジ・ポーズ(セツバンダ・サルバンガーサナ)


ボルスターふたつを並べましょう。ひとつは壁に水平に、ふたつ目は数センチ離して縦に置きます。仰向けで横たわり、両肩と頭は床に下ろし、足は壁につけておきます。両腕を快適な場所に休ませ、横に開くか、肘を曲げて手のひらを上に向けておきます。このポジションで5-10分間ホールドします。



壁に脚をあげるポーズ(ヴィパリタ・カラニ)


ボルスターを壁から数センチ離して水平に置きます。床に座って右へ向き両手で体を支えます。下半身をボルスターの上に載せましょう。両脚をあげて、脚の後ろ側が壁につくまで壁に寄ります。(このポーズの入り方は最初は落ち着かないと思うかもしれません。)ボルスターの上で腰が持ち上がって支えられていると感じるまで、位置を調整しましょう。首や頭の下に折り畳んだブランケットを置きたいと思うかもしれません。(このポーズは逆転のポーズなので、生理の時はやめておきましょう)



椅子を使った屍のポーズ(シャヴァサナ)


ブランケットを載せた折り畳み椅子を用意し、その前に折り畳んだ2枚のブランケットを縦にして置きます。ブランケットの上に横たわり、膝を曲げ膝下を椅子のシートにおきましょう。目を閉じて、体全体をリラックさせ、5-10分間休みます。






(出典)https://yogainternational.com/article/view/5-poses-for-headache-relief


2020年12月31日木曜日

臀筋を使う Vol.2
Recruit the Glutes

 

ヨガポーズで臀筋群を活性化する


ただ裸足で歩くというだけで、臀筋の最善で最も効果的なエクササイズのひとつとなり、ヨガの練習は裸足での運動の効果を拡大し大幅に増加させてくれます。臀筋群は、両脚に荷重がかかっている時に本領を発揮するので、臀筋のためのヨガは主に立位やバランスのポーズとなります(臀筋は後屈ポーズでも重要な役割を持ちます)。



ウトゥカタサナ(椅子のポーズ)




ウトゥカタサナは、大抵は大腿四頭筋を燃焼するポーズだと考えられていますが、臀筋にも効果的で、このポーズを練習することで上記にあるような相互収縮などを体験することができます。ウトゥカタサナは、全体的にスクワットより膝に優しいのですが、大腿四頭筋や臀筋の強化にも効果的です。


ポーズに入るには、ウッターナサナ(立位の前屈)で前屈します。足の親指同士をつけ、内踵を少しだけ離しておきます。両膝を深く曲げ、膝の内側をくっつけ、同時に両腕を前に伸ばして、古いスタイルでプールに飛び込むかのように手のひら同士をつけましょう。


足先を少し持ち上げて、体重が踵に移動するようにしましょう。四頭筋の中心がより強く働くのを感じるでしょう。膝頭に向かって疲れを感じないようにしましょう。より深く曲げるためには、内腿の上部を床に向かっておろします。


踵の中心を床に押し、臀筋が使われて腰がウエストラインから下方へ伸びるのを感じるまで、坐骨を踵に向かって引きましょう。臀筋群が働くと、内腿が硬くなるのを感じるでしょう(でも詰まりを感じてはいけません。もしそうなら、もう一度下方へおろしましょう)。四頭筋の中心もより強く働くはずです。両肩を後ろへ引き腕を頭上に挙げて完全なポーズに入りましょう。



このアライメントは全ての立位ポーズで確認することができます。どの場合も、体重を踵のより中心に移動しつま先の掴む力を緩めることで、臀筋や腿、腰の動きを感じるでしょう。臀筋にかかる効果がより大きくなるのは、特にアルダ・チャンドラサナ(半月のポーズ)などのバランスポーズです。



アルダチャンドラサナ(半月のポーズ)





このポーズは、あまり人気のあるポーズではありませんが、それはバランスを取るのが難しく、また軸足側の股関節に詰まりや不快を感じることが多いからです。股関節を安定させ、腰を伸ばし、ハムストリングスの付着部を保護するために臀筋が十分使われていないと、こうした問題が現れます。膝がロックされていたり腰が反りすぎていると気づいたら、アルダ・チャンドラサナで3つ全ての臀筋を活性化することに注目しましょう。



このポーズに入るには、左側のトリコナサナ(三角形のポーズ)から始めましょう。左膝を曲げて体重を前方の左足に移動し、右足を後方へスライドします。左膝を曲げたまま、床と平行になるまで右脚を持ち上げましょう。軸足を伸ばして膝をロックしたくなるのを我慢しましょう。その代わりに、左膝を曲げた状態でつま先をやや持ち上げ、体重を踵の中心、後方へ移動します。バランスを取るためにつま先を使っても構いませんが、ふくらはぎとハムストリングスを堅めるだけなので、つま先で床を掴まないでください。踵の中心で地面を押し、左脚をゆっくりと伸ばしながら腿、腰、臀筋の反応を感じましょう。坐骨周りの筋肉が硬くなって坐骨を踵に向かって下げ、四頭筋に力が入って腰へとエネルギーを引き上げます。腿そのものは、膝が足の中央に並んだ状態を保ち股関節の詰まりを防ぐために十分な幅で外旋するでしょう。ポーズを反対側で繰り返します。





最初は、特に膝をロックし膝頭が内側へ回転してしまうと、ポーズの中でバランスを崩すかもしれません。しかし、過伸展による大腿骨の内旋が癖になると、間違いなく股関節の痛みに繋がりポーズも不安定になることを覚えていてください。この新しい外旋を促進するため、母指球と内踵を地面にしっかりと付けたまま臀筋を働かせ、そして脚を真っ直ぐに伸ばしましょう。ポーズが軽く感じるようになり、土踏まずが強く、そして股関節が沈見込んだり詰まったりしなくなるはずです。



アルダ・チャンドラサナでは、実際に層になった臀筋群をさまざまな面で使うので、「全ての臀筋」のバランスをとるポーズになります。挙げた脚が適切に支持されれば、これは腰の痛みや疲労に悩む妊婦にも良いポーズです。腰の長さと臀筋が胸腰筋膜を引っ張っているという感覚は、赤ん坊という追加の重みを抱えていることから来る腰のストレスを緩和することができます。それ以上に、筋膜に対する大臀筋の引きが、腱が特に動きやすい妊娠の時期に仙骨を安定させることにも役立ちます。

  • アルダ・チャンドラサナは、臀筋群の全ての層を運動させることができる

  • 大臀筋は脚を挙げ、それを高く保つために腿を外転させる。また、股関節を開いてバランスを保つためにちょうど良い幅に軸脚の腿を外旋させる中心的な役割を担っており、それが腰の筋膜を伸ばして仙骨を安定させる。

  • 中臀筋は、軸足の股関節を安定させる中心的な役割を担い、大臀筋とともに挙げた脚の股関節の前を長く伸ばす。中臀筋は、軸足の股関節で最も働き、ポーズに安定を軽さを与える。

  • 小臀筋は最も深い層であり、股関節を覆い大腿骨頭の全面に付着している。軸足の股関節を曲げて腿を外旋させ、股関節で感じやすい詰まりを防ぐのを助けている。

踵の中心で地面に根付き、臀筋群を働かせれば、アルダ・チャンドラサナのようなバランス・ポーズはアライメントが整った姿勢を促進します。そして臀筋だけでなく体全体で感じられる多くの恩恵を受けることができるのです。



(出典)https://yogainternational.com/article/view/recruit-the-glutes




2020年12月28日月曜日

臀筋を使う Vol.1
Recruit the Glutes




あなたは知っていましたか?姿勢の改善、膝関節や股関節の安定、腰痛の緩和が、臀筋を構成する3つの筋肉を使うことで同時に可能だということを。これらの筋肉の主なものが、あまり評価されていない完全な姿勢のための「皇帝」である大臀筋、そして彼の従者である深層筋の中臀筋と小臀筋。これらの臀筋は、正しく使えていれば、腰椎や仙骨、股関節、膝などの健康に不可欠な役目を担っています。使い方が正しくない場合は(大抵はそうなのですが)、関節に問題が生じたり、ハムストリングスが過剰に発達したり硬くなります。まず、臀筋の解剖学をみていきましょう。そして、これらの筋肉がヨガポーズの中でどのように役立つのかを学びます。




臀筋の解剖学


臀筋には3つの層があり、それぞれが機能的に様々に補完し合っています。臀筋の主な機能は、最も外側にある大臀筋によって行われます。大臀筋は股関節伸展、すなわち腿を後方へ伸ばし、股関節の前をストレッチします。また、水平方向へ股関節を回転させ、腿を外へ回します。これらの動きは、単純な歩くという動きには不可欠で、もし大臀筋がうまく働かなければ他の筋肉(特にハムストリングス)が補完しなければならなくなり、その過程で硬くなり過剰に発達します。

 
中臀筋は、脚に体重をかけている時に大腿骨を寛骨臼内で安定させる働きをします。例えば、ヴリクシャサナ(木のポーズ)やパダングシュタサナ(足先を持つポーズ)などで、片足でバランスを取る際、中臀筋が股関節を水平に保ち、側方に揺れたり倒れたりするのを防ぎます。これは、上げた脚の方向へ骨盤が倒れるのを防ぐため、腰の外側が収縮し(腿の外転)ているのです。より重要なのは、単純に歩く動きで不可欠な役割を担っており、この筋肉がなければ、前へ進もうと片脚を挙げる毎に側方へ倒れてしまうでしょう。中臀筋は三日月か半月の形をしており、腰骨の外端に沿って着いており、骨盤の後ろの仙骨から大腿骨頭の前に向かって伸びています。


最も深い層では、小臀筋が股関節を内旋、屈曲させます。基本的には大臀筋と逆の働きをしており、大臀筋を補完して動きのバランスを作ります。また小臀筋は股関節を外転させ、パダングシュタサナなどのポーズで脚を挙げ、股関節を屈曲するときに、大腿骨が関節内で摩擦を起こさないようにします。









完璧な姿勢のための鍵




臀筋はそれぞれ「使わなければ無くなる」タイプの筋肉で、残念ながら私たちの多くには臀筋を使わない姿勢をする癖があり、臀筋が発達しません。よくある姿勢が後傾姿勢で、股関節が脚を通って走っている重力ラインよりも前に傾いている状態です。このミスアライメントを補完するため、大抵の場合、膝は後方へロックされ腰は前傾して上体が丸まります。これらは全て臀筋が正しく働くのを妨げています。臀筋が平たく発達しなくなり、ハムストリングス(股関節と膝をこの位置で支えるのを助けています)が硬くなって過剰に発達します。つまり問題は2つの要素からなります。


臀筋は脚に荷重がかかった時に働きますが、本当に正しく荷重がかかった時にだけ、正しく働くのです。臀筋や脚の筋肉の使い方が理想に最も近づくのは裸足で歩く時なのですが、これは歩くたびに体重が踵の中心にくることに大きな理由があります。靴を履いて歩く時には異なることが起こります。靴そのものが、臀筋を正しく使えているかどうかを教えてくれます。靴の踵を調べてみましょう。特に踵の後ろ外側がすり減っていることがわかるかもしれませんが、これは踵の外側が一番先に地面に着いているというサインです。実際、ほとんどの靴が、高く柔らかい踵のおかげで、このような歩き方をするようになっています。


では踵の後ろ外側に体重をかけると何が起こるのでしょうか?脛や足首が硬くなるほどに足首を曲げて足を下ろすと、下の脚がまだ後方へ倒れたまま土踏まずが潰れて内側に回転します。これが足首を硬くし、脛骨過労性骨膜炎になりやすく(特にランナー)、土踏まずを弱くするあるいは平たくする、そして足底筋膜炎による足の裏の痛みへと繋がっていきます。膝にも影響があります。下の脚の角度によって膝が過伸展しやすくなります。ハムストリングスは硬くなり、股関節の前傾により股関節の前部がストレスを受けて弱まります。


裸足で歩くと、これは変わります。足首をあまり曲げず踵の中心から下ろすことが多くなり、足指の付け根がすでに床に近い状態になります。踵からつま先へと一歩の間により自然に荷重が移動し、足首は土踏まずの強さを維持できる位置にあります。これが上記の問題を少なくし、臀筋を正しく使えるというおまけもあるのです。


自分の姿勢をチェックするのは簡単です。臀筋の動きを観察しながら、上記の様々な歩き方を試してみましょう。親指と人差し指で大臀筋をつまんで、それぞれの場合でどのように働いているかを観察します。まずは靴を履いてやや大袈裟に後傾姿勢をとってみましょう。上体を後方に倒し、腰を前に出して膝をロック、歩き始めましょう。おそらく、臀筋の動きはとても小さく、前に体を出すためにハムストリングスに重みを感じるかもしれません。では、膝のロックを外してやや「マイクロベンド」し、腰を後方へ動かして体重が踵の中央へ乗るようにしてから、歩きます。臀筋群の動きを比較してみましょう。臀筋がより働くのを感じたら、それは改善のサインです。


最後に、靴を脱いでもう一度歩きましょう。床が硬ければ硬いほど、足首の屈曲を小さくして踵の中心からおろしたくなるはずです。そして踵を下ろすときに特に、臀筋をより強く働かしていると感じるでしょう。つまり、踵の中心に体重をおき歩く時に臀筋を働かせることに集中することで姿勢を正すと、良いことが起こるのです。

  • 踵が地面を蹴る時にやや前傾することで(後傾姿勢で後ろに傾くよりも)胴部のアライメントがよくなる

  • 膝や股関節がややマイクロベンドになり、足首や脛の緊張を減少させて腱を保護し過伸展を防ぐ

  • 歩く際に踏み込む時踵から足先へと進み土踏まずが強く維持され、足裏の潰れを少なくし、足裏と足首の疲れを防ぐ

股関節を正しく調整すると、特に上記のポイントで臀筋を使うことができます。そして臀筋が働けば、腰や膝関節、股関節を安定させることができます。




臀筋を働かせる:体への影響

腰を安定させる


腰を覆っているのは、強靭な結合組織の膜で、腰、股関節、胴部、そして肩の筋肉に編み込まれています。胸腰筋膜として知られ、腰の「策具」を形作り、船のマストを支えるように脊椎を支持しています。大臀筋が収縮すると、下方へと交差する支持部分を緊張させ、特に歩行や前屈などの臀筋群が働いている場合に腰椎が長く仙骨が安定します。



健康的な膝と股関節


臀筋が使用されると多くの筋肉もまた相互に収縮し、それに沿って主に四頭筋が使われるのですが、それだけでなく内転筋(内腿の筋肉)が外転筋としての臀筋の動きを補完します。膝の健康を維持するには、特に四頭筋の内側広筋が重要です。臀筋を使うと内側広筋が同時に使われ、膝の健康維持の可能性が高まります。


結果として、こうした相互収縮(股関節の前部にある腸腰筋の小さな収縮も含みます)が起こり、大腿骨頭が寛骨臼のより中心へと保たれ、股関節の全体的な摩耗を減少させます。反対に、大臀筋が使われていないと、他の筋肉が腰のアライメントを支持しなくなり(特に関節の前部)、股関節そのものが摩耗し深刻な症状につながっていくのです。



(出典)https://yogainternational.com/article/view/recruit-the-glutes



2020年12月25日金曜日

股関節の痛み:対策と予防 Vol.2 
Hip Pain: Overcoming and Preventing It



内転筋と外転筋のバランスを見つける有用なツールはヨガブロックです。ヨガブロックを使うと、同時に大腿骨を回転することなく、鼠蹊部を和らげて内腿上部を坐骨に向かって引く方法がわかります。この過程で、中臀筋のバランスのよい動きができるようになります。


両方の腿の上部の間にブロックを置いて始めましょう。内転筋の動きがわかるはずです。両手を股関節の谷へ、そして人差し指を谷に沿って置いて鼠蹊の筋肉が感じられるようにします。

大腿骨を平行にしたまま、両膝を曲げます。これが回旋筋群をある程度中和し、内転筋の動きをよりわかりやすくします。体重を踵に少し移動し、つま先を和らげましょう。


 

股関節のバランスを取るーステップ1


では、硬くしないように、内転筋に優しく力を入れましょう。内腿の上部を坐骨の方向へ「溶かし」、ブロックを締め付けないように後ろへ引きます。この動きが内腿の後ろから来るのを感じましょう。腿の付け根の筋肉が人差し指がの下で、柔らかくなるのを感じるでしょう。柔らぐとともに、仙骨が前傾し腰のアーチが強くなります。


このように、大腿骨を内に大きく回転させたり緊張させたりしないで、中心に向かって内転筋を「螺旋状」に動かしましょう。最初、この動きは鼠蹊部の緊張を解き、和らぐように感じます。しかし続けていると、大腿骨を関節の中心に置くには、関節の中で大腿骨を横に動かして広げるという動きが必要となります。



ステップ1:ブロックを締め付けないで後ろへ引き、
鼠蹊部を緊張させず大腿骨を内旋させずに
中心に向かって螺旋状に動かす。
ステップ2:親指で筋肉の動きを観察しながら、
ブロックを後方、下方に動かす力と
尾骨を地面におろす力のバランスを取る。



そして次は、内腿を、指先の下にある鼠蹊ではなく深いところで硬くし、腿の内側全体を坐骨に向かって後方へ伸ばします。この深い内転筋は、すでに部分的に使われいるはずです。より強くして、それらの筋肉が大腿骨に対して外側へ押すようにしましょう。内腿が反発しあって(引きつけるのではなく)磁石の両極のほうに働きます。これが骨盤底を開きます。



股関節のバランスを取るーステップ2


次に、両脚を伸ばしていきましょう。ここで中臀筋が働きます。尾骨が重くなり床に向かって降りていくのをイメージしましょう。まるで尾骨が、やや前方に曲がりながら下りているしっぽであるかのようにこの重みを感じます。内腿を後方へ溶かし続けて、この尾骨の引き下げとバランスをとりましょう。


尾骨を下げながら、脚を伸ばし続け徐々に大腿四頭筋(腿の前)を硬くしていきます。ブロックを後方へ下げ続けるために内腿がより強く働き始め、強くブロックを締め付けているように感じるでしょう。ブロックを後方へ引く力、下げる力、そして尾骨に向かって下ろしていく力のバランスをとりましょう。


脚を長く伸ばしていくつれ、臀部の上部と腰の横の動きを感じるでしょう。これが中臀筋です。親指を臀筋の上に戻し、どの筋肉が働いているかを感じてみましょう。また、大きな臀筋(大臀筋)が、尾骨に向かって内側へ締め付け始めていないか、緊張しすぎていないか、両脚が外旋して腰が硬くなってしまっていないかをみましょう。脚をまっすぐに伸ばしながら、骨盤の中心部のスペースを感じ続けます。この場合、「中心を掴む」というのは、デリケートかつダイナミックなバランスで、地面と繋がりつつ広がっています。胸が引き上がって開き、腰はリラックスして(自然なカーブを維持しつつ)伸びているでしょう。



より深い練習:パリヴリッタ・トリコナサナで股関節痛を緩和する


他の立位ポーズ、特にツイストでは、同じ動きをしていますがより著しくなります。パリヴリッタ・トリコナサナやパリヴリッタ・アルダチャンドラサナは特によい例です。というのも、正しくやれば股関節痛や腰痛を緩和してくれますが、間違ってやると挟み込みや股関節の軋みの原因となるからです。


正しい動きを覚えるため、パリヴリッタ・トリコナサナをパートナーの助けを借りて試してみましょう。パートナーに後ろ足の踵の外側あたりに片足を置いて立ってもらいます。そこにしっかりと立っていてもらいましょう。ベルトを後ろ脚の内腿の周りにかけます。



パリヴリッタ・トリコナサナ
ベルトが腿上部を内側、坐骨に向かって後方へと螺旋状に動かす。
練習で、この動きを自分でできるようになる。




ツイストに入ったら、パートナーに股関節から斜めにとても優しく引いてもらいます。あなたの股関節の左右が並んで安定する程度の強さで引いてもらい、内腿の筋肉(大腿骨でなく)が内側そして坐骨に向かって後方へ螺旋状になるように内側をやさしく引いてもらいましょう。ベルトは、内腿の筋肉の強さであり支えの役割をします。ここでは、股関節を平行に保ちながら、この動きを自分で作り出すことを身につけましょう。


それから、前脚に注目します。アライメントを確実にしましょう。膝を少し曲げて必要なら腿を調整し、坐骨と膝、踵の3点を並べましょう。それから脚を伸ばし、腰の外側に力が入って硬く強くなるのを感じましょう。


次に、大腿四頭筋を強くして下腹部に引き上げ、脚を地面に向かって伸ばしましょう。先程の練習で親指を置いていた臀筋上部から脚を下ろします。そこから、お尻の中心、大腿骨を通るエネルギーの流れを感じ、腰の外側を後方へ引きましょう。


ストレッチと力が、腰の前で同時に起こっていることに注目しましょう。腰が固まって丸くなるので、脚を伸ばしすぎないようにします。同様に、しっかり伸ばさないと、腰が過剰に落ち込んで腰の外側(中臀筋)に不快な張力を感じ、内腿を締め付けます。バランスが取れていると、中臀筋が股関節前部から骨盤の重みを引き上げてくれます。後ろ脚の内腿(ベルトの力を借りて)の引き上げと広がり、そして中臀筋の動きによる前脚からの伸展とグラウンディングの組み合わせにより、股関節が左右平行になるのです。最終的には、股関節が広がり、強く、そして安定します。


これらの筋肉を使うのがより難しくなるのは、全体重が片足にのるバランスポーズで、特にパリヴリッタ・アルダチャンドラサナのようにツイストとバランスの組み合わせです。ここでは、後ろ脚の内腿はより強く働かなければならず、中臀筋のより力強い働きで前脚をグラウンディングしなければなりません。股関節を左右平行に安定させるため、腰の外側と臀筋が強く働きます。


パリヴリッタ・アルダチャンドラサナ
このポーズでは、解放され支持された内転筋が引き上がり、
中臀筋が長く伸展することでバランスが作られる。




このように股関節に働きかけることで、股関節痛や怪我を防止するのに役立つだけでなく、何世紀も前に市場でシャンカラチャリヤが学んだ教訓を思い出させてくれます。それは、ヨガマットの上だけでなく日々の生活にも当てはめることが重要な教訓です。私たちの中心を保つことで、精神的にも肉体的にも、強さ、広がり、そして内なる自由の感覚を得ることができるのです。

2020年12月22日火曜日

股関節の痛み:対策と予防 Vol.1 
Hip Pain: Overcoming and Preventing It


股関節痛 – 主な原因


聖人のシャンカラチャリヤは、早い時期に人生の偉大なる教訓のひとつを見つけていました。内なる自己をしっかりとしがみついていられなければ、私たちは平凡な毎日という石臼に粉々にされていまうだろう。この気付きは、子供だったシャンカラチャリヤが、市場で小麦を挽いている女性に出会った時のことでした。その光景に深く取り乱した彼は、涙を流しながら先生のもとへ走っていきました。「人生ってそういうものなんですね」と彼は泣きました。「毎日、時間の石臼で粉々に挽かれているのですね」先生は、彼と一緒に市場へ戻って、石臼の上の石を持ち上げて言いました。「見なさい。中心の軸にしっかりとしがみついている粒はそのままだ。そういうものだけが道を見失わずに済むのだよ」シャンカラチャリヤは感動し、この教えを晩年にも役立てました。私たちもまた、様々なレベルにおいて役立てることができます。


この教えは、私たちの人生の精神面と同様、身体の状態にも応用することができます。何年も使い続けた私たちの関節は、荷重というストレスの下で、ギイギイ、パキパキ、ゼイゼイと「粉々に挽かれ」てしまいます。


単純な要素が組み合わせが、股関節に十分な大きさのストレス嵐を作り上げ、それが股関節痛を引き起こします。特に、ジョギングや散歩の好きな人、週末のアスリート、そしてもちろんアサナの練習をしている人(注意が足りない時には)など、活動的な生活を送っている人たちに多いのです。この問題と、それが原因で起こる股関節痛を理解するには、二つの重要な筋肉群を見ることが必要です。内転筋(内腿と鼠蹊部の筋肉で両脚を身体の中心線へ引く)と外転筋(股関節の外にあって、腿を中心線から離す)です。


 


多くの人で鼠蹊部の筋肉(内転筋)が硬くなりがちで、大腿骨頭をソケットに引き込みます。大腿骨はソケットの中心で外転筋によって安定しなければならないのですが、これは鼠蹊部の筋肉とは逆の働きをします。しかし、この外転筋が弱くなったりストレスを受けていると(大抵の場合はそうなのですが)、結果として崩れたバランスがきしみや関節の悪化、股関節痛となる可能性があります。

しかし、必ずしもそうでなるわけではありません。ヨガは、私たちの広がった中心「近くでホールドする」ことへの理解を与えてくれ、スピリチュアルな面だけでなく股関節の健康に保ちしなやかに歳を重ねていくツールとなります。ヨガは、人生のあらゆるレベルのバランスと調和を目的としており、股関節の痛みや怪我を防止しながら安定、活性化するのに役立ちます。



股関節痛と怪我


内転筋、または鼠蹊部の筋肉には2種類あります。短い方は、恥骨から内腿へと伸びており、よく負傷します。これらの筋肉は、長時間の座り続けや運転、姿勢のストレスなどから硬くなります。この硬さは、悪いフォームでのランニングや、片側のヒップの上で子供を抱える、左右非対称のヨガポーズを間違って行うなどの骨盤を捻ることで、より悪化します。また感情的ストレスによっても両腿をぎゅっと寄せることになるため、硬さが生じます。


その結果起こる怪我は、鼠蹊部の損傷です。突然の勢いのあるストレッチ、特に筋肉が温まっていない時には、筋繊維や腱が裂傷します。例えば、ランナーが中心線を超えて前脚を出して走ると、短い内転筋が硬くなり疲労します。そのストレスは、坂道を駈け上がる時(トレッドミルも含む)に増大するのです。






怪我はアサナの練習でも起こります。パリヴリッタ・トリコナサナやエーカ・パダ・ラジャカポタサナのようなポーズで、前脚の内腿を恥骨から離して引くときに、鼠蹊内転筋は強く引き込まれます。これらのポーズでは、「中心線を挟んで」と指示されることが多いのですが、実際には強く挟みすぎる可能性があり、股関節の中で骨が中心に来るために必要なスペースを作ることができなくなっているかもしれないのです。


主要な外転筋である中臀筋は、股関節内の大腿骨を安定させ、股関節を安全に保つのを助けます。腰骨を大腿骨頭に向かってひきこむことで、この外転筋は股関節を安全に、そして中心線に向かって内転筋が引かれる関節内のスペースを保ちます。私たちが一歩歩くたび、中臀筋は股関節が横に傾くのを防ぎ、関節内で大腿骨を中心に保つのです。






内転筋に関しては、中臀筋の損傷は、ランニングやピボットなど骨盤が捻れたり回転する動きで悪化します。この筋肉は、片足に全体重が乗るとき、ハーフムーン・ポーズ(アルダ・チャンドラサナ)やツリーポーズ(ヴルクシャサナ)などのバランスポーズなどで特に強く働きます。中臀筋が弱く鼠蹊が硬いと怪我をし、その怪我が関係痛となって腰痛を起こし、仙腸関節の機能不全による痛みと間違われることもあります。




股関節痛を防ぐためにバランスを取る



これらの2セットの筋肉群の調整をとることが、股関節の怪我を防ぐのに役立ちます。また、脚や股関節、骨盤の動体的な使い方を新たに理解するのにも役立つでしょう。深いレベルの気づきは、タダサナというシンプルな立位ポーズを意識することから始まります。
 




私たちが脚を伸ばして真っ直ぐ立つと、大臀筋とそのほかの骨盤深くにある回旋筋によって、腿の自然な外旋が起こります。過度の回旋は股関節に問題を起こす可能性があります。中臀筋は回旋筋ではなく、内転と外転、収縮と伸展のバランスを作り出し、内転筋とよい関係を持っています。この関係は、コアが軽く、開いていて引き上がっていると、保持されます。この正しい内側の動きにより、両脚が強く地面についていればいるほど、コアが引き上がるのです。


内転筋と外転筋の正しいバランスを見つけるためにはふたつの難しい問題があります。まず、立っている時に、鼠蹊部、つまり内腿の上部にある緊張をどのように解くかと身に付ける必要があります。次に、臀筋を使いすぎず、かつ鼠蹊部を固めず、どのように両脚を伸ばすのかを見つけなければいけません。どちらの動きも、坐骨から膝の内側に走る深く長い内転筋を正しく使う必要があるのです。


 
可能性のある怪我
ツイスト・ポーズで骨盤を回旋させるほど、
股関節へのストレスは大きくなる。
腰の後ろが下がると、腰の前が引き上がり、
中臀筋の固定と引き込みが同時に起こる。






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次回に続きます。



2020年12月18日金曜日

筋膜とヨガについて知っておくべきこと 
Everything You Need to Know About Fascia and Yoga



筋膜は、体の他の部分と同様に重要です。ヨガの練習は、筋膜を健康に保つことができ、柔軟性や安定性を高めるために作り替えることも可能です。


こんな感覚を感じたことがあるでしょう。脚をストレッチすると肩の凝りがほぐれる、股関節を開くと腰痛が緩和されるなど。これを起こしているのは、自然の意図なのです。私たちは皆、「筋膜」と呼ばれるコラーゲンの絡み合った網を体中に持っており、この網の一部で何かが起こると私たちは他の場所にその影響を感じることができるのです。


「前屈はハムストリングスのストレッチ?まあ、そうです。でもそれ以上です」と、アナトミートレインの著者であり「Fascial Release for Structural Balance」の共著者トム・マイヤーは説明します。「ヨガで筋膜を考慮しなければ、それが何なのかという全体像をみていないということです」







筋膜が重要な理由


筋膜要素とヨガ


ヨガのアサナを含む動きは、筋膜を活性し、みずみずしく耐性を維持することで筋膜を健康的に保ちます。ヨガは、筋膜の4つの重要な要素に影響します。

  1. 水。筋膜のほとんどは水です。筋肉を伸展、収縮する時やヨガポーズをホールドする時、あなたの筋膜から水が圧搾されます。動きを止めたり伸展をやめると組織は再び水分を取り戻し、より多くなります。科学的証拠が示しているのは、筋膜は動きを通して、絞り出した以上の水分を吸い上げるということです。「水は動いて場所を変えます。そして水は組織の様々な化学物質を出し入れしますが、それには神経ペプチドやホルモン、新しいタンパク質、ヒスタミンなどを含みます」ヨガのポーズは、体を組織的に全可動域で動かすため、ヨガはこうした再生を促進するのに特に長けているのです。


  2. ヒアルロン酸。ヒアルロン酸はスポンジ状構造をしていて、水分を吸い上げます。たっぷり水分を含んでいるときは、卵白のようなジェル状になっています。「このヒアルロン酸が水分を保っているときは、とても素晴らしい潤滑性があるので関節の中の抵抗はほとんどゼロに近い」とマイヤーは言います。しかし、ヒアルロン酸の水分が足りない時には粘りが出ます。動かさなかったり、あるいは自然な加齢により筋膜の潤滑性は失われ、関節はお互いに軋みあって関節炎へと向かってしまうのです・・。この関節内部の相互作用こそが関節炎へと、悪化への道を進ませるのです。また、使いすぎも問題になります。摩擦が多すぎると炎症が起こりヒアルロン酸の鎖を切ってしまい、組織をまとめて水分を保つことが困難になります。「水分が勢いよく入ってくる状態、それを腫れと呼んでいます」マイヤーは言います。


  3. グリコサミノグリカン。グリコサミノグリカンは水分をとらえます。水分が近くにあるときはシダのように広がって、その端に沿って水の分子を引き込みます。体を動かさないでいると、それらが丸まったままになります。「ヨガで行う動きによって、特に普段動かさない場所の、グリコサミノグリカンが割れて開くため、広がって水分を受け入れる」と、マイヤーは言います。


  4. コラーゲン。コラーゲン(肉の中に見える白い筋ばったもの)は、鉄よりも強靭です。その繊維がお互い寄り添うように並んでいます。「これをストレッチすると、この粘った分子が放たれます。これらの繊維間にある結合が解かれます。繊維がお互いに滑りあって、そして結合を長い形へと作り替えるのです」


筋膜の成長とヨガ


筋膜で働いている細胞は線維芽細胞です。これは、新しい筋膜を作り古い筋膜を取り除きます。新しい筋膜は、フェルトのようでどの方向にも動く組織されていない繊維です」マイヤーはいいます。「横になっているだけでは、筋膜を組織づくることのできる細胞はひとつもありません。あなたの動きが筋膜を作り組織立てている」ヨガなどの動きを通して、筋膜を組織立てはじめると、以下のような性質を認識し始めるでしょう。


  1. 弾力性。筋膜は、ゴムバンドのようではなく、スーパーボールのような弾力性を持っています。復元率にすぐれています。弾力性は良いことです。必要なのはバネのような腱(筋膜がたくさんあります)だとマイヤーは言います。筋肉ストレッチで弾力性をトレーニングすることができます。1秒間ほどの曲線の動きが、筋膜の素早いストレッチと反動を作ります。急な坂を自転車でこいで上がるよりは、ウッティタ・トリコナサナで30秒間ホールドしたり、エアロビクスで弾む動きを取り入れてみましょう。


  2. 可塑性。筋膜は粘着性と柔軟性があり、可塑性に優れています。例えば、ウッティタ・トリコナサナのように長いストレッチをすると、筋膜繊維の間の結合が溶けてお互いにスライドしあって長さをつくりますが、こういったときに可塑性が上がります。薄いプラスチックのバッグをゆっくり伸ばすところをイメージしましょう。あなたが引っ張っている箇所でプラスチックは長くなり、元の形には戻りません。柔軟性を通り越して可塑性へと移動したわけです。マイヤーによれば、あなたの筋膜でも同じことが起こります。柔軟性と可塑性を超えてストレッチし腱を無理に引っ張ったり、急に筋膜をストレッチすると、怪我をしてしまいます。


  3. 再形成する。筋膜は常に再形成されています(線維芽細胞が古い筋膜を取り除いて新しい筋膜を作り上げるのを思い出しましょう)。、例えば、腱を強く引っ張って筋膜を損傷した怪我を考えてみましょう。体を保護するため、線維芽細胞が新しい筋膜をどんどん作って瘢痕組織(きずあと)ができます。しかし、再形成にはよい面があります。激しいヨガや運動で筋膜に著しい負荷がかかったとき、筋膜はフィットネス業界がいうところの「ティア・アンド・リペア」で再形成されます。少し筋膜が引き裂かれるのですが、年齢や食事、健康状態、運動習慣などにより、1-2日間あるいはそれ以上の時間をかけて修復されていきます。




「マットの上で行っているのは刺激です」とマイヤーは言います。「マットから出た後に起こることの方が、あなたの体にとってはより興味深いのです」言い換えれば、より興味深いのは、再形成や編み直しです。時間が経つにつれ、再形成によって筋膜のより健全なパターンが作られ、例えば頭が前に突き出たような悪い姿勢を正してくれるのです。





2020年12月14日月曜日

肩の怪我を理解し防ぐ VOL.2
Understand and Prevent Shoulder Injuries



肩甲骨を解放する


まず、ウォリアーIIのポーズで両腕を両サイドに伸ばしましょう。両腕は肩と同じ面か、やや前に来るように気をつけましょう。「すくめ」を体験するために、手の親指が下向きになるよう手と腕を回転させましょう。首の両サイドが持ち上がって、三角筋が緊張し、肩が固まるのを感じましょう。



緊張したウォリアー II: 三角筋が緊張していると肩が持ち上がる



次に掌が上向くように手と腕を回転させ、手の小指を上に伸ばしましょう。背中の丸みがなくなります。肩甲骨の内側上部が開放されて後ろに下がり、首の横が柔らかくなります。肩甲骨が背中に安定して支えられ、腕の重みが首ではなく肩甲骨に支えられていることを感じましょう。特に肩甲骨の外側の筋肉が硬くなると同時に三角筋が柔らかく、肩関節がより開いて開放されるのを感じるでしょう。肩甲骨に支持を感じるために腕を小さく回してみましょう。


リラックスしたウォリアー II: 肩がリラックすると
肩甲骨の上部内側が下がり首が柔らかくなる




同じすくみがパールシュヴァコナサナで上の腕を頭上に伸ばした時にも起こります。腕を伸ばすのが難しい生徒が多くいます。三角筋が硬く、肩がすくんで首が詰まって頭を回すのを不快にさせています。これも肩甲骨から始まっていて、腕が肩関節にうまく入り込むため後ろへ下げることができていないのです。




パールシュヴァコナサナ:腕をやや前にC字の形で伸ばし、
肩の挟み込みを防ぐ。腕が回転して肩甲骨が開放されるのを感じよう。



パールシュヴァコナサナで肩を開放するには、上の腕を少し体の前にして、小指の方向へ伸ばしながら小さな円弧を描くように腕を回し、小指でアイスクリームを救うかのように手でCの字を作ります。肩甲骨が解放され耳から遠ざかって後方へ下がり、上腕骨が耳の横で正しい場所に嵌まり込んで、頭の回転するスペースを作ります。これは簡単ですがとてもエレガントな肩甲骨の動きで、肩を開くと同時に、背中と肩の深層筋を微細に下へ下げることで回旋腱板の締め付けを防ぎます。



肩関節を保護する


肩甲骨を感じるというのは、まだ始まりに過ぎません。回旋腱板(特に棘上筋)を保護し治癒するには、骨の位置を直すだけでなく、三角筋の情報への引きに対抗する筋肉群を活性化し強化しなければなりません。ダウンドッグやハンドスタンドなど腕を伸ばしたポーズでは、こうした筋肉を使いますが、この位置では肩もまた最も動きやすく脆弱な状態にあります。シルシャーサナ(ハンドスタンド)のバリエーションから安全に始めましょう。このポジションでは腕と肩がより安定しています。そして、このヘッドスタンドの準備練習の目的は腕をより荷重に耐えられるようにし、もし少しでも頭に荷重がかかるとしても首は安全なままです。


壁に向かったダウンドッグ


この練習法では、腕に荷重をかけずに肩の正しいアライメントを築くことができます。壁に向かって立ち、指を組んで両肘を肩幅に開き、前腕をヘッドスタンドの位置で壁に置きましょう。両掌は離しておき、腕が、V字ではなく逆さになったU字になるようにします。股関節から前屈しながら後ろへ歩きましょう。U字を保ったまま、体が直角くらいになり(必要なら膝を曲げます)頭が上腕と同じ高さになるまで腕を壁に沿って下げましょう。頭頂は壁につかなくても構いません。



上腕二頭筋の外側に軽く力を入れて、肘の内側から腋に向かってエネルギーを引き寄せましょう。この動きは肩を安定させ保護します。上腕二頭筋は力を入れると腕骨を肩関節に引き寄せるからです。肩を開いて関節内の挟み込みを防ぐために、両肘の間にビーチボールをギュッと挟むように、二頭筋を硬くして肘同士をアイソメトリックで寄せます。ウォリアーIIで小指を上に回した時のように、上背部が広がるのを感じましょう。


前腕を壁に押し付けて肩から上体をストレッチし、壁から離れます。肩に怪我がある時は、肩に痛みや詰まりを感じないところに止まりましょう。最初は頭と壁の距離は3-6センチくらいしか離れないかもしれません。それで大丈夫です。肘を押すと、肩甲骨がどのように背中で力強くなるか、肩の内部でより大きなスペースを作り出すかに気付きましょう。比較するために、手首で押してみて、どのように三頭筋や三角筋が働き肩が硬く丸くなるかを見てみましょう。腕に荷重がかかっている時に肘で押すとより深層の筋肉が活性化します。広背筋、肩甲下筋や大円筋です。これらは腕骨頭を後下方に引き、肩峰突起から遠ざけます。これが棘上筋の挟み込みを防ぐのです。壁に前腕を押して背中を伸ばす一方で、上背部が丸くなり過ぎないようにします。肩甲骨の間から床に向かって背骨を下ろし、腕を使い続けます。このストレッチを30秒程度ホールドしましょう。



椅子を使ったヘッドスタンド


次のバリエーションでは、腕により荷重がかかります。ここで補助が役に立ちます。安定した椅子を、滑らないように壁に向けて置きましょう。椅子に背を向けて前に座り、両脚を伸ばして椅子から脚の長さ分の距離を測ります。ここでかかとがある場所に肘を置くことになります。


さて、椅子から離れて、腕をヘッドスタンドの形にして肘を測った場所に置きましょう。両足を床につけたまま爪先を立て、ダウンドッグをする時のように腰を持ち上げます。二頭筋の内側に軽く力を入れ、前腕を下方へ体から離すように押し腰を後ろにストレッチ、肘から腰にかけてをまっすぐにしましょう。頭頂部を手の間の床に置き、頭ではなく腕にほとんどの荷重がかかるように、腕を強く押しましょう。このストレッチを腕を押しながら30秒程度ホールドします。


もし、ほとんどの荷重を腕に載せた続けることができ、そして肩関節に詰まりが無いようであれば、片足ずつ椅子の上に置いて腰を持ち上げ、より腕に荷重をかけます。(首を保護し肩を強化するために、頭が前腕のラインに来るように床から頭を完全に持ち上げてもよいでしょう)前腕全体を床に押し、特に肘を強くしましょう。



ヘッドスタンドのバリエーション:床に前腕全体を押して肩を強化し首を保護する




ヘッドスタンドのバリエーション


次の練習では、椅子を移動させて壁から脚の距離を測ります。両手の指を組んで頭を両手の間に置き、両手で後頭部を囲み、手首の骨が床と直角になるようにします。もし首に問題があるようであれば、ここでも頭を床から浮かせても良いですが、かなり努力が必要となるでしょう。まずダウンドッグ・バージョンをしてから、片足ずつ壁に移動させ体が直角になるようにしましょう。最初にやった練習の逆さバージョンです。このポーズはウルドヴァ・ダンダーサナ(下向きの杖のポーズ)と呼ばれることもあります。両腕を押して首の荷重を減らし、両肩を耳から腰の方へ引き上げましょう。この動きが肩峰突起から腕骨を遠ざけ、棘上筋を安全に保ちかつ治癒するのを助けてくれる筋肉群に力が入り強化します。


この練習は回旋腱板の怪我にどれほど効果があるのでしょう?2006年に the International Journal of Yoga Therapy で発表されたある研究では、10人の回旋腱板を負傷した人に、同様のヘッドスタンドのバリエーションを毎日30秒間6週間練習をしてもらい、その後6週間毎にフォローアップのセッションをし、平均で4.9ヶ月続けました。10人のうち9人が肩の可動域に向上がみられ、最初の30秒のセッションの後すぐに肩の痛みが減少しました。最後のフォローアップでは、8人に著しい可動域の向上、痛みの75パーセント減少がみられました。手術に至ったものは誰もおらず、これは激しい痛みを伴う回旋腱板負傷患者には珍しいことです。


すでに完全なヘッドスタンドの練習をしていて、アライメントや予防策に気づいているなら、肩を強化しながら治療するルーチンにこのアサナを取り入れても良いでしょう。ポーズの間は、前腕全体を床にしっかり押して体重を分散させる必要があります。



ヘッドスタンド:肩が落ち込むと体がバナナのようにアーチ形になり(左図)
回旋腱板に負荷を与えます。これを防ぐには、
首から肩を持ち上げるときに前腕をしっかり押します(右図)。




ヘッドスタンドでは、肩は耳の方へ丸まる傾向があります。結果として、体が「バナナ」になってしまいます。もし腰や首に圧迫を感じるなら、バナナ形になっているサインです。もう少し肘を押しましょう。同時に、腿を強く安定させて腰を少し後ろへ下げて肩の真上に来るようにし、両足を前に、かかとの内側と母指球を高く伸ばします。下腹部を強くして体を安定させましょう。頭頂に向かってのびながら首が長くなっているように感じなければなりません。


肘をもっと床に押すと、肩を広げることができ、耳から腰の方へ持ち上げることもできます。肩甲骨の外側がどのように使われているかを感じましょう。今使っている筋肉こそが、練習を通して目覚めさせ強化させている時に、肩のバランスの取れた動きを作り出し回旋腱板の怪我を保護してくれる筋肉なのです。


肩は、毎日のとても多くの活動で重要な役割を果たしています。楽器を弾いたり、タイプしたり、運転したり、もちろんヨガやスポーツでもそうです。毎日の練習に逆立ちを肩強化の練習を含めることはとても意味のあることです。そして最後に、世界の負担があなたの肩にやや重過ぎると感じたら、逆さになることでちょっとした解放感を得られるでしょう。アトラス神(訳注:ゼウス神から双肩に天を担わされた巨人)もまた、ヘッドスタンドをよくしたはずです。





2020年12月9日水曜日

肩の怪我を理解し防ぐ VOL.1
Understand and Prevent Shoulder Injuries

私は仕事上PCでタイピングすることが多く、また楽器を弾いたり料理を作るのが好きで、つまり腕を前にして作業をする時間がかなり長い方です。そんな私は、ヨガを始めてすぐの頃に無理なチャトゥランガで肩の怪我をしました。そして痛みがほとんどなくなるまで数年かかり、その間はアームバランスのポーズを試す度におかしな痛みを感じました。いまでも右肩は左肩と比べてかなり可動域が狭く、すぐに疲れて痛みを感じやすいのです。なかなか治らなくなる怪我。みなさんには経験してもらいたくないなーと思っています。

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あなたが両腕を上げる度、肩の筋肉は小さいものも大きいものも、微細なニュアンスで踊り始めます。これらの筋肉の複雑な相互作用は、肩関節の特別な構造に伴っており、両腕に大きな可動域を与えています。実際、肩は体の中で最も緩い関節のひとつなのです。しかし、この動きの自由にはよくない側面もあります。肩は、突然の転倒や野球のボールを投げるなど継続的な動きからの怪我に弱いのです。回旋筋腱板の筋肉は、肩で最もデリケートな部分ですが、特に敏感なところです。しかし、いいお知らせもあります。目的にあった定期的なアサナの練習は、回旋筋腱板を健康に保つ効果があります。アライメントに気付きを与え、肩の筋肉を強化し、胸を開きます。そして下記のポーズは、既に怪我をした回旋筋腱板をも治癒に向かわせる効果もあります。



肩の解剖学


肩関節の独特の性質を、特に肩甲骨との関係について見ていきましょう。肩関節は臼状関節とされていますが、上腕骨頭に丸い「球」はあってもそれに対するくぼみ(窩)はありません。そのかわりに、鎖骨の端と肩甲骨が一緒になって、その下から上腕がぶら下がっている棚を作っています。この棚は肩峰突起と呼ばれています。この下には丸いくぼみがありますが、肩甲骨の一部です。このおかげで肩関節は「窩」を持つことができ、上腕骨頭がこの表面を滑ることで回転し、そして回旋腱板の安定した収縮が関節をひとつにまとめています。


回旋腱板は、実は4つの分かれた筋肉からできていて(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)、上腕骨頭の前後で重なり合って関節を安定させています。これらの深層筋は肩峰突起に直接ついているより大きく強い筋肉群と重なり合っています。回旋腱板の筋肉は、上腕骨そのものの動きを導き、他の大きな筋肉群は、上腕骨と肩甲骨をひとつのユニットとして機能させながら肩全体の動きをコントロールします。





怪我の起こり方


回旋腱板の怪我で多いのは、肩の最も端にある三角筋(腕を上げるための大きな筋肉)の下です。怪我は、上腕骨頭に直接ついている小さな筋肉で腕を頭上に持ち上げる三角筋を助ける棘上筋に起こります。この三角筋の強さこそが棘上筋の怪我を引き起こすことが多いのです。腕を頭上に上げる時、三角筋は体から80度あたりまで腕を引き上げることができます。ここで、三角筋だけでは腕を上げることができなくなり、腕骨が肩の高さくらいに来ると、上に上げるのではなく腕骨を引くことしかできません。腕をひき上げ続けると、三角筋はやや弛緩して棘上筋が急いで助けに入ります。棘上筋はその後腕を30-40度上げますが、そのあとは三角筋はその仕事を終えることができます。


棘上筋が怪我をするのは、80ー120度の間です。大きなゴム輪くらいの大きさの棘上筋の腱は、筋肉の中で最も怪我をしやすい部分ですが、筋肉そのものもまた怪我をします。これは、特に激しいアド・ムカ・シュヴァナサナ(ダウンドッグ)や、最近人気の派手なヴァシスタサナ(サイドプランク)、そしてアドバンスのアームバランスポーズ、ティティバサナなどで起こります。


単純な事故もまた棘上筋腱を傷つけます。例えば、凍った駐車場で転倒して腕をついたりして、上腕骨が窩に入り込み棘上筋を肩峰突起との間に挟んだり、腱を切ってしまったりします。また単純な腕を上げるという反復する動作でも起こります。頭上にある棚の何かを取ろうと手を伸ばした時、三角筋が上腕骨を強く引きすぎて肩峰突起を押すので、棘上筋を挟んでしまいます。時間が経つにつれ、小さな怪我が積み重なってより深刻な問題になっていくのです。


肩はこうした挟み込みを防ぐように作られているのですが、使い方の癖や毎日の生活で、バランスが崩れたり痛くなったり、動かなくなったりします。この問題は姿勢の癖から始まります。私たちの多くは、腕の重みを支えるために肩の筋肉を使いすぎています。首に最も近い筋肉である菱形筋と肩甲骨上部から首に伸びる肩甲挙筋がその重さを担っています。これは、タイピングなど肩を長時間すくめた状態になるような活動の時には特に問題となります。慢性的な緊張が積み重なり、肩甲骨の内側が耳に近づき、背中や肩が丸くなります。これが悪いサイクルの始まりとなります。これらの筋肉が引っ張るので肩甲骨が背中を丸く持ち上げ、筋肉がより硬く収縮し、肩甲骨をさらに高く引き上げます。この姿勢と緊張の結果、三角筋が弛緩すべき時にも全く弛緩しなくなります。あなたの肩が前に巻いていて腕を80-120度上げる際に三角筋に力が入っているとしたら、上腕骨が肩峰突起に押し付けられて回旋腱板腱を挟みこんでいるかもしれません。


この悪循環を防止し肩筋肉の力とバランスを取り戻すためのヨガ・ポーズは、様々な方向へ腕を上げる簡単な立位のポーズから、体重を直接腕で支えるポーズまで様々あります。以下の立位ポーズは、腕を上げる際の肩甲骨の健康的な可動性を取り戻すのに役立ちます。また、菱形筋や肩甲挙筋の負荷を緩和するため他の筋肉を活性化することも可能です。逆立ち特にヘッドスタンドは、肩筋肉を強化しまた、より開いてストレスから解放してくれます。
 
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次回に続きます。



2020年11月15日日曜日

ブラマリ(マルバチの呼吸)で心を鎮める
Calm Your Mind with Brahmari (Bee Breath)

今回はプラナヤマのひとつ、ブラマリという呼吸法についてです。
口を閉じて蜂の羽音のような音を出す呼吸です。
この記事ではただ両目を閉じていますが、両手で両目と両耳を塞いで視界と外の音を遮断してやる方法もあります(閉所恐怖症の方には辛いかもしれませんね)。

コロナが出てから、対面のクラスでは呼吸法を練習するのを控えていますが、ヨガの本質は呼吸にあるといってもいいくらいです。アサナだけでなく、ぜひプラナヤマの練習も取り入れてみてください。

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ブラマリは、喉にある生命中枢であるヴィシュッダ・チャクラに直接の効果があり、これはヨガの高度な実践では必要不可欠の局面を持ちます。また、口蓋にあるタル・チャクラも刺激します。タントラの書物によれば、タル・チャクラは松果体と脳下垂体の活動をコントロールし、つまり体の微細な生化学をコントロールしています。


このテクニックで作られるバイブレーションは、この部分の神経末端を活気づけ、体全体や精神に深い効能をもたらします。





マルバチの呼吸の練習


心地よい姿勢で座り、両目を閉じ、鼻から深い横隔膜呼吸を行いましょう。普段の声の高さでハミング(鼻歌)してみましょう。そして舌の奥を口蓋に押し当てます。あまり強く舌を押し付けると喉の気道が完全に閉ざされてしまい、空気が流れず音が出ません。舌を少し引き揚げて喉から鼻腔へと移動する音を聞きましょう。ブラマリの蜂のようなハミングが鼻腔の中で振動するのを感じましょう。


この練習を始めた最初は、ハミング音が出るのは息を吐いた時だけでしょう。舌と喉をリラックスさせて普通に息を吸いましょう。上達とともに、吐く息ごとに安定してハミング音を鳴らしてみましょう。



毎日、空腹の状態で2、3分間ブラマリを練習しましょう。そして、快適で心地よいと感じられる範囲で徐々に5分間へと延ばしていきます。もし、めまいや痺れ(特に唇や指先など)または不安感など、ハイパーベンチレーションの症状を少しでも感じたらシンプルに横隔膜呼吸に戻し、その日の練習はやめましょう。



この練習の効果を最大にするには、音を出すのをやめた後、目を閉じて静かに座ることです。ブラマリのあとは、心と体の静寂をはっきりと感じるでしょう。この静寂は、呼吸への気付きや瞑想などでより長く感じ続けることができます。





2020年11月12日木曜日

ストレス反応を変える方法 Vol.2 
How to Change Your Stress Response

横隔膜呼吸


赤ちゃんや幼い子供は、肺の空気を出し入れするための胸腔と腹腔を隔てたドーム型の横隔膜を使って、深くたっぷり呼吸しています。お腹はリラックスしていて呼吸とともに動きます。これが自然で健康的な呼吸の方法です。しかし、成長するにしたがい、お腹を引き締めるように教えられ(お腹を引いてまっすぐ立ちなさい!)、そしてストレスを感じると腹部を無意識に緊張させる癖がつき、自然な呼吸の流れを邪魔するようになります。腹部を引き込むと呼吸は肺の上部でのみ行われます(乳首より上)。そのため、体はその呼吸パターンをストレス反応と理解し、ますます闘争逃走反応が強まります。





その一方で横隔膜呼吸は、副交感神経の主要な調整者である迷走神経を刺激して、休息消化反応を活性化させます。迷走神経は脳から胸部腹部のほぼ全ての内臓を通り、鎮静効果の連続を誘引します。ほとんどの場合、私たちは何か心地よいものやたまたま起こる効果によって活性化されることを待っている状態なのですが、この神経(つまり副交感神経全体)は横隔膜呼吸によってスイッチが入ることを気づかずにいます。


自立神経によって調整されている全ての作用(心拍数、血圧、消化液分泌、蠕動、体温など)のうち、意識的にコントロールできるのは呼吸だけです。呼吸で、横隔膜(迷走神経の他の部分や脳にメッセージを送る)に刺激を与える迷走神経の一部を刺激し、休息消化反応の全体を活性化することができます。ですから、慢性的なストレス反応を逆転させる第一歩は、生まれつきしていたはずの呼吸の方法をもう一度覚えることなのです。


もし横隔膜呼吸の訓練をしたことがないのなら、経験豊富な先生を見つけてそれがまた習慣になるまで毎日練習しましょう。そして、毎日の活動を通して横隔膜から呼吸するスキルができれば、自身の呼吸が神経システムのバロメーターだということを体験するでしょう。横隔膜から深く呼吸している限り、もし不快な状況に立ち向かったとしても、落ち着いてバランスの取れた感覚になれると気づくはずです。そしてまた、呼吸を胸で浅く行うと不安が忍び寄って筋肉が緊張し、心も焦って廻りはじめることに気づくでしょう。この動揺した呼吸が長く続くと、毎日が落ち着きのない防御的なものになるでしょう。一旦これを体験から学ぶことができれば、違う選択ができるはずです。



体系的なリラクゼーション


副交感神経を活性化するためには、横隔膜呼吸からはじめると良いでしょう。しかし、特に何年間も無意識に虎のオリを開けっぱなしにしている時には、さらに必要でしょう。毎日、リラクゼーションの時間をとることが必然です。私がこう言うと、患者たちは皆「テレビをみながら」「本を読みながら」「編み物をしながら」「みんなと過ごしながら」リラックスしていると言います。問題は、こうした活動は常にそこにある不安から気を逸らす(そのためいくららの解決にはなります)ことができる一方で、筋肉の収縮や緊張として持っているストレスを解消することはほとんどできないと言うことです。


体に緊張感を持ち続ける癖を直すには、ヨギが「プラナマヤ・コーシャ(エネルギー鞘)」と呼ぶものに働きかける必要があります。頭から爪先へと順番に緊張を解く体系的なリラクゼーションの練習です。他のヨガの練習と同じようにこのテクニックもたくさんありますが、最も良い方法は経験豊かな指導者から学び、磨きあげていくことです。その種類は、簡単な緊張・弛緩の練習や点から点への呼吸の練習から、エネルギー鞘の様々な点をはっきりと区別することが必要となるテクニックにまで及びます。しかし全ては、順序だって身体中に注意を移動させていくもので、大抵の場合はシャバサナで休みながら行います。そして日常の出来事から注意をそらしていくことも必要となります。練習の間は、記憶や予定や不安、空想などをやめ、今ここで行っていることに集中し、気付きを静かにやさしく体の一点から他の一点へと移動させていきます。



横隔膜で呼吸し、体系的に体のある部分から他の部分へと全ての注意を向ける事は、注意の向いている場所の緊張や疲労を解消するだけでなく、それらの点の間のエネルギーの流れを増大させます。これが、癒しと浄化を促進します。さらに、体系的なリラクゼーションの練習に全ての集中を集めるには、心を明快にし今という瞬間に完全に注意を払う必要があるため、瞑想への扉を開く技術を磨くこともできます。



瞑想


ストレスが私たちの生命(あるいは少なくとも私たちの幸福感)が危険だと認識することで始まるため、この認識を変えるよう心に働きかけることがストレス反応を鎮める最もパワフルなテクニックなのです。闘争逃走反応を活性化するもののほとんどは、生きるか死ぬかと言うものではありません。ある課題を達成するプレッシャーを感じたり、明日のミーティングで何が起こるのか心配したりしますが、その結果私たちの生命がどうなるわけでもありません。レアケースを除いて、ストレスを作り出す思考パターンは大抵の場合日常の出来事への過剰反応です。体中にアドレナリンを流すような反応ではなく、ストレスを少なくするだけでなく実際に起こっていることを正しく認識するよう(「渋滞に巻き込まれただけで、死にかけているわけではない」「この人を喜ばせたいけれど、もしできなくてもクビになることはない」)組み直すことができます。これが闘争逃走反応を徐々に鎮めていき、瞑想で得られる体験とともに得られるスキルです。


瞑想は、心の癖を中庸な視点から観察する機会をもたらすことでその癖を理解するのに役立ちます。ですから、私はストレス管理の方法として瞑想を処方するのです。私は瞑想を霊的な変移の手段として軽視したくはありません。が、その初期の段階においては、瞑想の最も素晴らしい高価のひとつは心のおしゃべりの狂乱や揶揄に引き込まれていくのを回避することができることです。瞑想はそうした揶揄の最中へ激突しないで、公平な目で観察することを可能にしてくれます。それはまるで、暖かく乾いた部屋から豪雨を見ているようなものです。思考とともに動くより心を見つめることで感じる平穏は、私たちの中心にある平穏なのです。


瞑想を始めたばかりの間は、瞑想の対象から心があちこち動いて他の思考に止まったりするでしょう。これは何度も何度も起こります。あなたがするべきことは、優しくそして何度も注意を瞑想の対象へと戻し、善悪の判断なしに辛抱強く行うことです。時に、この邪魔をする思考が心のスクリーンにうつされた映画のように見えるかもしれません。変だったり激しかったりするかもしれません。しかし、あなたは休息消化モードにあって、面白いことにその心の映像は闘争逃走反応を起こさないのです。ただそれらを観察できるということは、それがあなたでないという証拠です。そしてあなたの内にいる観察者と心の混沌を区別できるということは、あなたは体いっぱいのストレス・ホルモンで反応しているのではなく、冷静に反応しているということを意味します。



瞑想を練習すればするほど、どれが現実でどれがそうでないかを区別できるようになります。つまり、どれが生命を危険にさらすものでどれが過剰反応なのか。そして、交感神経を活性化させるほとんどのことはただの習慣的な過剰反応であるとわかってくれば、違った選択ができるようになります。不快な出来事に反応するのではなく、意識的に横隔膜から呼吸し、そして瞑想で心のおしゃべりを観察するのと同じ方法で観察することで、神経に触る影響を緩やかにすることができるのです。



最初は難しいかもしれません。パートナーや同僚があなたに怒鳴ったら、おそらくあなたも怒鳴り返そうとして胸で呼吸しているのに気づくかもしれません。そうしたら、横隔膜から呼吸し中庸の視点から見るのだと思い出しましょう。でも時間とともにそのスキルが身についていくでしょう。特に習慣的に瞑想の練習をしたり、横隔膜で呼吸したり、毎日リラクゼーションの練習をしていれば。そして、休息消化反応を意識的に続けて活性化させることを選択すれば、闘争逃走反応が起こるのは、運転している車が氷の上でスリップしたり、猫がキャンドルを倒してカーテンに火がついたときくらいになっているのに気づくはずです。健康になって、毎日も楽しくなるでしょう。正しい扉を選ぶことを学んだのです。

2020年11月8日日曜日

ストレス反応を変える方法 Vol.1
How to Change Your Stress Response

今回は、自律神経と心身ともに健康でいるためのヒントについてです。
私が学んだヴィヴェカナンダ・ヨガ研究所のヨガセラピーは、基本的にいかに意識的にリラックスし心を穏やかにするかに注目したものです。難しく考える必要はありません。簡単な方法でできるのです。

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「女か虎か?」というお話を知っていますか?その最後には、ヒーローは2つのそっくりな扉の前に立ちます。ひとつは美女が隠されていて、もう一方は恐ろしい虎がいます。ヒーローはこのどちらかを開けなければならないのですが(選択権は彼にあります)、どちらに美女がいてどちらから虎が飛び出してくるかを知るすべはありません。


患者が慢性ストレスの症状を訴える時、私は時々この話を思い出すのです。頭痛や消化不良、潰瘍、筋肉のこわばり、高血圧、あるいはこれらの組み合わせ。私がそれはストレスが原因だと指摘すると、患者は諦めたように見えます。ストレスはこんなにも多くの人たちの生活に常に存在し、全ての扉の向こうに虎が潜んでいるかのようです。逃走闘争反応が神経に深く繋がっていると私のオフィスにくる人々のほとんどは知っていて、その多くは絶え間ない緊張の感覚を正常のものあるいは避けようのないものだと受け入れています。


そうではないのです。物語のヒーローのように私たちには選択することができます。もうひとつの扉があって、そちらも神経に深く繋がった毎日の困難への反応があるのです。そしてこの運命が運次第であるヒーローと違って、私たちはどちらの扉がどちらなのかを見つけることができます。神経の一般的な理解とストレスに対する反応、そして基本的なヨガの3つのテクニックを訓練すれば、扉を見分けることができるようになります。こうしたテクニックを練習することが、虎を放してしまう扉を硬く閉ざしたまま美女を選ぶ力を与えてくれます。



虎を放つ


自律神経は、体の無意識の処理全てをコントロールしています。呼吸の速さ、心拍数、血圧、消化液の分泌や消化器の蠕動、体温などです。自律神経にはふたつの大きな要素、部分があります。交感神経と副交感神経です。私たちがストレスを感じると、脳が交感神経を活性させ闘争逃走反応と呼ばれています。これが副腎髄質からアドレナリン(エピネフリン)を分泌させ、このホルモンが血流を廻りほとんど全ての臓器に影響します。アドレナリンは、生命や手足の脅威を切り抜けるよう体を勢いづけます。心臓は速く強く打ち、血圧を急上昇させ、呼吸数が上がって胸へ空気が送り込まれ、気管が広がってより多くの酸素を体に取り込み、血糖が上がって燃料供給を準備し、肌と体の中心の血液を制限するよう血管が収縮、脳や手足には血流を送るため他の血管が膨張します。するとどうなるでしょう?体は闘うか走るかのために緊張し、心は極度まで警戒します。


この反応は生命を脅かすような時には重要な反応です。もしアメリカライオンとばったり出会ってしまったらこのストレス反応が私たちの生存の可能性を劇的に大きくします。この素晴らしい反応の話を聞いたことがあるでしょう。子供助けるために自動車を持ち上げた母親や、燃え盛る建物から自分の2倍もある男性を担ぎ出した消防士。これはすべて交感神経のおかげです。生命の危機に晒された時に素早く断固としていつでも反応する、感謝すべき神経システムです。


闘争逃走反応は、本当に危険が迫った稀な時だけに作動するようになっています。理想的には、次の危機一髪がやってくるまでは(何週間、何ヶ月、あるいは何年も先)休眠状態です。しかし、私たちの多くは毎日のように、毎時間のように反応しています。戦士や綱渡り曲芸師、SWATチームの人たちなどは、頻繁に生きるか死ぬかの状況にいることでしょう。が、ほとんどの人にとっては、強盗や交通事故、山の中で熊に出会うなど稀なことです。いったんそうした脅威が収まれば、ホルモン信号はストレス反応を止め、恒常性が取り戻されるのです。


私たちの多くにとっての問題は、闘争逃走反応はなかなかスイッチが切れることがなく、ストレスホルモンが継続的に体の中を廻り続けることです。







知らないものへの恐怖、周りの状況の大きな変化、将来への不安、消極的な態度など、これらは全てストレスの原因です。今日私たちは、野生動物と闘うこと以上に、仕事や人間関係、交通渋滞に巻き込まれることなどに不安を感じていますが、それが精神的なものであってもいまだ古代からの生存反応のスイッチが入ってしまうのです。


その結果、私たちの体はいつも緊張状態で、闘うか逃げるかの準備をしていて、これが身体的な問題を引き起こします。体内をアドレナリンがめぐる時に何が起こるかを見れば、こうしたことがわかるはずです。血圧上昇、速くて浅い呼吸、高血糖、そして消化不良です。さらに、アドレナリンは怪我をした時にすぐ血液が固まるよう血小板の粘度を上げます。これによって怪我からの生存率を高めますが、慢性的な高粘度の血小板は、血液がより固まりやすくなり動脈が詰まりやすくます。そしてこれが心臓発作や脳梗塞へと繋がっていきます。


ダメージはここで終わりません。絶え間ない闘争逃走モードにいれば、副腎皮質がコルチゾールを分泌し始めます。このステロイドの仕事は、十分な燃料を確保することで長期間の非常事態に対応するのを助けることです。コルチゾールは、肝臓や筋肉組織に働きかけ、糖(グルコース)と脂肪を作って血流へと放たせます。身体自身から見れば、これは合理的反応です。脂肪や糖を血中へ送り出すことは、例えば沈む船で生存するために役立ちます。しかし、この燃料が長引く体の緊張の反応の中で代謝されなければ、結果的に病気になります。血流の過剰な糖は糖尿病、過剰な脂肪はコレステロールや中性脂肪のレベルを高くします。このどちらの状態も心臓病の危険を高めます。


コルチゾールやコルチゾンなどのステロイドは、自己免疫疾患や喘息の炎症を鎮めるので短期間の使用は有用ですが、血流に長期間存在すると免疫機能を抑制してしまいます。これが血液細胞(バクテリアやウィルス、癌細胞、カビなど有害な微生物からの勇敢な防御役)を不活性にさせます。そのため病気になりやすくなり、特にライム病、肝炎、EBウィルスの慢性感染症や癌にかかりやすくなるのです。


怖いですよね。そうです、これが虎なのです。交感神経が慢性的に活性化されていると体は常にプレッシャー下に置かれます。初期症状を無視すれば(肩こりや消化不良、繰り返す頭痛、怒り易い、気が動転しやすいなど)遅かれ早かれ虎が私たちを引き裂くでしょう。けれども私たちは違う選択をすることができます。自律神経ののうひとつの働き、副交感神経です。略奪の交感神経の暴君の元で生きるより、休息と消化の反応を起こす副交感神経のスイッチを入れることを学ぶのです。



脅威と危険によって自動的に起こる闘争逃走反応と同様に、休息消化反応もまた心の落ち着きによって自動的に起こります。副交感神経が活性すると、心拍数と血圧は下がり、呼吸はゆっくりと深くなります。血流が体の中心に集まってきて、消化を促し、免疫システムを支え、幸福感をもたらすのです。



私たちがこの休みの状態を無意識に作っているのは、心から笑っている時や深い睡眠状態の時です。心地よく、自身に課している忙しさからより必要となる休息を与えてくれます。しかし、ストレス状態を普通と受け止めて、ほんのたまにだけしかリラックスした幸福感を感じなければ、そうなってしまいます。いつももうひとつの扉があるのにもかかわらず、1日に何回も虎を解き放ってしまいます。意思を持って扉を開けることを身に付けられれば、休息消化の神経システムを活性化させてストレス反応を引き起こす悪い癖を直すことができます。




美女と出会う

私は治療の中で様々な自然両方を使いますが、ストレッチや呼吸、リラクゼーション、瞑想など、基本的にはヨガを用います。これらのテクニックは特にストレスマネージメントに効果的です。有酸素運動がストレスからきた緊張を解消するのに素晴らしい方法であり、砂糖やカフェイン、辛い食べ物が神経を昂らせ怒り易くすることは、個人的な経験から皆さんも気づいておられるでしょう。そして、緊張して疲れた体を動かしてストレッチし呼吸に集中することを教えてくれるヨガのポーズを練習することで得られるリラックス効果もよくご存知でしょう。しかし、このゆっくりした深い呼吸が休息消化のシステムを活性させる最も簡単な方法だとご存知でしたか?これがヨガがこんなにも人気である理由のひとつです。疲れた神経を鎮静し不安な心を穏やかにしてくれます。しかし、ヨガはまたより深いレベルにまで働きかけます。健康的な呼吸パターンを再構築し、意識的にそして体系的にリラックスすることを教えてくれ、瞑想を通して精神の内側を探求する機会を与えてくれます。これらのテクニックは(個別でも組み合わせても)、副交感神経を活性化して強化し、休息消化反応が私たちの通常モードになるようにします。そして闘争逃走反応は、自然がそのように作ったように、緊急のために置いておきましょう。では、2番目の扉を開ける方法のいくつかをみていきましょう。


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次回に続きます。